チダイ(読み)ちだい(英語表記)yellowback seabream

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チダイ」の意味・わかりやすい解説

チダイ
ちだい / 血鯛
yellowback seabream
crimson seabream
[学] Evynnis tumifrons

硬骨魚綱スズキ目タイマダイ亜科の海水魚。関東地方の沿岸では、小形のものをハナダイとよぶところがある。北海道南部以南の日本海沿岸と太平洋沿岸の日本各地、東シナ海、朝鮮半島、インドネシアの海域分布するが、南西諸島にはいない。体は楕円(だえん)形で強く側扁(そくへん)し、体高は高い。眼下幅は広く、両眼間隔域は隆起する。犬歯上顎(じょうがく)前部に2対、下顎に3対ある。上下両顎側部に弱くて小さい2列の臼歯(きゅうし)がある。背びれ第3棘(きょく)、第4棘の先端部は柔らかく、やや長くて糸状。臀(しり)びれの軟条は9本。一見、マダイと似ているが、マダイは全長1メートル以上になるのに対し、チダイは45センチメートルまでであり、普通は30センチメートルのものが多い。体は赤色で、腹部は淡紅色。主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)縁辺の膜は濃赤色。体側上半部にコバルト色の小斑点(しょうはんてん)が不規則に数列散在する。尾びれは赤い。背びれの長さ(マダイは短い)、臀びれの軟条数(マダイは8本)、尾びれ後縁の色(マダイは黒い)でマダイとチダイは区別できる。やや沖合いの岩礁、砂礫(されき)、砂底に生息する底層遊泳魚で、底生の無脊椎(むせきつい)動物、魚類などを食べる。産卵期は9~11月。卵は分離浮性卵で、直径0.91~1.10ミリメートル、油球は1個。水温20℃では約2日で孵化(ふか)する。仔稚魚(しちぎょ)は内湾の藻場(もば)に、幼魚は沿岸の砂泥底にすむ。一本釣り、延縄(はえなわ)、定置網、底引網などで漁獲される。肉は白身で、刺身、吸い物、焼き物、煮物などで賞味される。祝宴などにはマダイのかわりに珍重される。ヒレコダイにも似るが、ヒレコダイは背びれ第3棘と第4棘が著しく糸状に伸びること、主鰓蓋骨の縁辺の鰓膜の鮮紅色部の幅が狭いこと、体高がより高く、体長は体高の2.2倍以下であることなどで、チダイと区別できる。また、近縁種に北西アフリカ産のカナリーチダイがある。

[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年7月19日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「チダイ」の意味・わかりやすい解説

チダイ (血鯛)
Evynnis japonica

スズキ目タイ科の海産魚。マダイにたいへんよく似ているため,マダイの代用品とされたり,区別されないことも多いが,チダイは尾びれの後縁が黒く縁取られていないことで区別できる。また,えらぶたの縁が血がついたように赤くなっている。全長45cmに達する。日本各地,朝鮮半島,東シナ海に分布しているが,南方に多い。地方名も多く,壱岐,対馬でヒダイ,高知県,新潟県でコダイと呼ばれる。また,雄の成魚では前額部が突出してくるので東京都でオオッパナ,銚子でハナダイと呼ばれる。関東の釣師の間ではこのハナダイが本種をさす名称として広く用いられている。幼魚は内湾の藻場などにすむが,成魚はやや沖合の岩礁域の底近くにすむ。肉食性で,甲殻類,多毛類,イカ類などを食べる。産卵期は9~12月で,直径1mmほどの分離浮性卵を産む。孵化(ふか)後3年で体長約21cm,5年で27cmに達する。釣り,定置網,はえなわなどによって漁獲される。とくに夏に美味で,このときはマダイより美味といわれる。刺身,塩焼き,吸物などに利用される。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「チダイ」の意味・わかりやすい解説

チダイ

タイ科の魚。地方名ハナッコ,ハナダイ,チコダイなど。全長45cmに達する。北海道南部〜東シナ海に分布。マダイ(タイ)によく似ているが,尾びれの後縁が黒く縁取られていないことで区別できる。産卵期は9〜12月,旬(しゅん)は春〜夏。マダイと同様に美味。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チダイ」の意味・わかりやすい解説

チダイ
Evynnis tumifrons

スズキ目タイ科の海水魚。体長約 40cm。体は強く側扁し,いわゆるタイ形。両顎の側方に 2列の臼歯がある。背鰭の第3,4棘は長く,糸状に伸びている。体は赤色で下方は淡く,体側に青色の小斑点が多数散在する。越冬場はマダイより深い。マダイに次いで美味とされる。北海道以南,朝鮮半島南部,中国,台湾に分布する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「チダイ」の解説

チダイ

 [Evynnis japonica].スズキ目タイ科マダイ亜科の海産魚.全長40cmほどになる.食用にする.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のチダイの言及

【タイ(鯛)】より

…しかし,長期間いけすで飼育したものでは体色が黒っぽくなり価格が下がるため,甲殻類を与えて赤みを出すなどの努力もはらわれている。
[タイ類]
 日本産タイ類にはマダイのほか,チダイ(イラスト),クロダイ(イラスト),キダイ(イラスト),ヘダイ(イラスト),ヒレコダイ(イラスト)など10種が知られている。いずれも沿岸性の海産魚で,水産上重要種が多い。…

※「チダイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android