チタン鉄鉱(読み)ちたんてっこう(英語表記)ilmenite

翻訳|ilmenite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チタン鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

チタン鉄鉱
ちたんてっこう
ilmenite

チタン鉱石鉱物の一つ。鉱石として利用できるものは、正マグマ性鉱床漂砂鉱床砂鉄)中に産し、磁鉄鉱と密接に共存する。ほかに塩基性岩~花崗(かこう)岩質ペグマタイト、中~高温熱水鉱床中に産するほか、各種火成岩変成岩中に少量成分として産する。月面に産する高Ti玄武岩のTiO2量の大部分はチタン鉄鉱による。自形は六角板状。日本では、大阪府茨木市銭原(ぜにはら)で径10センチメートルを超えるものを産した。花崗岩質ペグマタイト中のものはマンガンを含み、キンバレー岩や月面岩石中のものはマグネシウムを含むものが多い。

加藤 昭]


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化学辞典 第2版 「チタン鉄鉱」の解説

チタン鉄鉱
チタンテッコウ
ilmenite

FeTiO3.FeのかわりにMg,Mnが入り,それぞれ固溶体をなす.はんれい岩せん緑岩斜長岩に伴って産出する.一般の岩石にも副成分鉱物として広く分布する.りょう面体晶系,空間群 R,格子定数 a0 = 0.5083,c0 = 1.404 nm.密度4.79 g cm-3.硬度5~6.六角板状.へき開なし.金属光沢黒色,二軸性負,複屈折大.Mg,Mnの割合が多くなればそれぞれゲイキ石,パイロファン石となる.また,常温では,6% 以下の赤鉄鉱Fe2O3を固溶している.固溶体分離現象のため,赤鉄鉱または磁鉄鉱とのintergrowthがしばしば観察される.

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改訂新版 世界大百科事典 「チタン鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

チタン鉄鉱 (チタンてっこう)
ilmenite

チタンの最も重要な鉱石。化学組成FeTiO3。六方晶系。厚板状ないし薄片状。鉄黒色,金属ないし亜金属光沢。モース硬度5~6。比重4.72。条痕は黒色。チタン鉄鉱は種々の火成岩や変成岩中に少量含まれ,塩基性深成岩中に比較的多量に含まれている。チタン鉱床はそのほとんどがジルコン,モナザイト,スズ石を伴うチタン鉄鉱あるいはルチルの砂鉱床で,アメリカ,インド,マレーシアなどに知られている。また,斜長岩に伴うチタン鉄鉱-磁鉄鉱鉱床はカナダ,アメリカなどに分布している。日本では三重県名張などの風化斑レイ岩中のチタン鉄鉱がかつて採掘された。
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百科事典マイペディア 「チタン鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

チタン鉄鉱【チタンてっこう】

チタンの主要な鉱石鉱物。組成はFeTiO3。亜金属光沢,鉄黒色で不透明。六方晶系。厚板状で鋭い菱(りょう)面体を示し,ときに葉片状,粒状で産する。硬度5〜6,比重4.72。弱い磁性をもつ。塩基性火成岩の副成分として存在,磁鉄鉱とともに鉱床を作る。砂鉄中にも含まれる。磁鉄鉱,赤鉄鉱中にチタン鉄鉱を含む場合には含チタン鉄鉱と呼ぶ。
→関連項目チタン(元素)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チタン鉄鉱」の意味・わかりやすい解説

チタン鉄鉱
チタンてっこう
ilmenite

イルメナイトともいう。チタンを含む鉄鉱物。 FeTiO3 。三方晶系。比重 4.70~4.78,硬度5~6。亜金属光沢の黒色であるが,反射顕微鏡下では褐灰色を呈し,弱い多色性と異方性が認められる。ゲーキライトおよびパイロファナイトとの間に連続固溶体を,赤鉄鉱との間に部分固溶体を形成する。火成岩の副成分鉱物として広く分布するが,塩基性岩の特に斜長岩に濃集して鉱床をつくることが多い。

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