チオ尿素(読み)チオニョウソ(英語表記)thiourea

デジタル大辞泉 「チオ尿素」の意味・読み・例文・類語

チオ‐にょうそ〔‐ネウソ〕【チオ尿素】

尿素酸素原子を硫黄原子に置換した有機化合物無色の針状または斜方状結晶融点セ氏180度。尿素樹脂染料試薬などの原材料となる。チオカルバミドチオウレア

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオ尿素」の意味・わかりやすい解説

チオ尿素
ちおにょうそ
thiourea

チオ炭酸のジアミド、あるいは尿素の酸素を硫黄(いおう)で置換した(チオは硫黄を示す接頭語で、チオ尿素の名はこのことに由来する)とみなすことができる化合物。チオカルバミドともいう。シアナミドH2NCNと硫化水素H2Sを反応させるか、あるいはチオシアン酸アンモニウムNH4SCNを170~180℃に加熱して異性化させて合成される。無色の結晶。水、エタノールエチルアルコール)にはよく溶けるが、エーテルにはほとんど溶けない。水溶液は中性である。金属塩と錯体をつくる。酸またはアルカリ加水分解すると、アンモニア、硫化水素および二酸化炭素に分解する。ホルムアルデヒド縮合してチオ尿素樹脂(ユリア樹脂)をつくる。染料や医薬原料として用いられるほか、分析化学では金属の比色定量および沈殿分離用の試薬として利用される。強誘電体である。

[務台 潔]

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改訂新版 世界大百科事典 「チオ尿素」の意味・わかりやすい解説

チオ尿素 (チオにょうそ)
thiourea


尿素の酸素原子を硫黄原子で置換した構造の化合物。チオカルバミドthiocarbamideともいう。ウェーラーF.Wöhlerの尿素合成と同じように,チオシアン酸アンモニウムの転位反応を利用して1869年に合成された。

 NH4SCN⇄H2NCSNH2

しかし,この反応は可逆反応で,チオ尿素の平衡組成が低いため合成の目的には向かない。アンモニアの存在でシアナミドに硫化水素を作用させることにより効率よく合成できる。

 H2NCN+H2S─→H2NCSNH2

融点180℃の無色の結晶。水,エチルアルコールに可溶。エーテルにはほとんど溶けない。溶液を160~170℃に加熱すると,速やかに転位してチオシアン酸アンモニウムになる。過マンガン酸塩で酸化すると尿素になる。各種の金属と付加化合物をつくる性質を利用して,ビスマス,テルルの比色分析,タリウム,鉛の分離,セレンの検出など分析試薬として用いられる。また,染料や医薬品の製造原料としても使われる。
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化学辞典 第2版 「チオ尿素」の解説

チオ尿素
チオニョウソ
thiourea

CH4N2S(76.12).S=C(NH2)2.チオカルバミドともいう.シアナミドと硫化水素との反応,またはチオシアン酸アンモニウムを加熱することにより得られる.無色の針状または斜方状結晶.融点180 ℃.密度1.406 g cm-3.減圧下150~160 ℃ で昇華する.水,エタノールに可溶,エーテルに不溶.金属塩および酸と付加物をつくる.ホルムアルデヒドとチオ尿素樹脂をつくり,また染料,医薬品の合成中間体としても用いられる.分析用には,Bi,Th,Te,Pd,As,Pb,Cd,Se,Ag,Hg,Cuなどの塩の定性,および定量に用いられる.金属の防錆剤,加硫促進剤にも用いられる.LD50 1 mg/kg(マウス,経口).[CAS 62-56-6]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チオ尿素」の意味・わかりやすい解説

チオ尿素
チオにょうそ
thiourea

チオカルバミド,チオウレアともいう。化学式 (H2N)2CS 。チオ尿素樹脂や有機合成原料として用いられる。針状晶,融点 180℃。石灰窒素泥中で,硫化水素を付加させて工業的に生産される。ホルムアルデヒドとの縮合により尿素樹脂を製造するほか,分析試薬としてビスマス,タリウムなどの定性定量に用いられる。

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百科事典マイペディア 「チオ尿素」の意味・わかりやすい解説

チオ尿素【チオにょうそ】

化学式は(NH22CS。無色の結晶。融点180℃。減圧下,160〜170℃で昇華。水,エチルアルコールに可溶。染料,医薬,合成樹脂などの原料。石灰窒素と水と硫化水素の反応などによりつくる。

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