チェーンストア(英語表記)chain store

翻訳|chain store

精選版 日本国語大辞典 「チェーンストア」の意味・読み・例文・類語

チェーン‐ストア

〘名〙 (chain store) 同一業種の多数の小売商店を一つの経営下に組織したもの。仕入れ人事事務管理などを本部に集中し、各店は販売に専心する。スーパー専門店、月賦販売店などの営業形態がある。チェーン店連鎖店。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「チェーンストア」の意味・わかりやすい解説

チェーン・ストア
chain store

19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカで発生し,1920年代に著しい発展を遂げた小売形態で,百貨店スーパーマーケットとならぶ三大小売業革新の一つといわれている。連鎖店という訳語は今日ではあまり使われない。レギュラーチェーンregular chainないしコーポレート・チェーンcorporate chainとボランタリー・チェーンvoluntary chain(VC)とに分けられるが,第2次大戦後にはフランチャイズ・チェーンfranchise chainないし契約チェーンと呼ばれる新しいチェーン・ストアも発展している。

 レギュラー・チェーンは,強力な中央本部と多数の小売店舗を有する一企業体である。各小売店は資本的に中央本部に所有されるのみならず,経営的にも強い統制を受ける。中央本部の役割は,商品を大量に仕入れ,これを各店舗に配送するとともに,広告・宣伝さらには店舗デザインの統一など,あらゆる面で一企業体としての経営管理を行うことである。アメリカの場合には食品,衣料品,薬品,靴など,日本では家電製品,薬品,靴などの商品部門で発展している。

 ボランタリー・チェーンは,同一業種ないし同一地域内の多数の独立小売店が相互組合を結成したり(小売店主導型),卸売業者と契約を結んだり(卸売主導型),あるいは製造業者と特約を結ぶ(製造業者主導型)などして,チェーンを形成するものである。各店舗が独立の小売商であるため中央本部の統制が緩やかであるという点でレギュラー・チェーンと異なるが,共同仕入れ,共同広告・宣伝,共同施設の保有など,チェーン組織としての統一された経営のもとで大規模組織のメリットを追求しようとする点では同一である。アメリカのボランタリー・チェーンはレギュラー・チェーンに対抗して発展してきたという歴史をもち,とくに食料品部門に多いのに対し,日本の場合には中小の独立小売商が百貨店に対抗するため組織したという経緯がある。また食料品部門より化粧品,薬品,菓子などの部門に多いのも日本の特徴である。

 フランチャイズ・チェーンは,商品の流通やサービスなどでフランチャイズ(特権)をもつ親企業(フランチャイザーfranchiser)がチェーンに参加する独立店(フランチャイジーfranchisee)を組織して形成されたものである。親企業は各独立店に商品およびサービスの一定地域内の独占販売権を与えるかわり,独立店側は親企業に対して特約料(ロイヤルティ)を支払うという契約によって成立する。アメリカから導入されたこのノウ・ハウは日本でも現在発展しており,とくにレストランなど外食産業で普及している。

 チェーン・ストアとくにレギュラー・チェーンの場合の長所と短所は次の点である。第1に,各店舗は各地域に存在する小規模店であるので,それぞれの地域に応じた弾力的な経営を行いうるため,百貨店のような大規模店に対して有利である。第2に,商品の共同仕入れ,共同広告,共同施設の利用などで1店舗当りのコストを下げることにより,廉価販売が可能となる。第3に,標準化商品の販売が可能となるため,商品の回転率を高めることができる。しかしその反面の欠点としては,第1に多数の店舗を管理するために管理費が上昇する。第2に各店舗ごとに有能な管理者をそろえることが困難である。第3に大量仕入れのため標準化された商品しか販売できない。第4に店舗の散在のため固定資産が過度にふくれ上がり経費を圧迫する,などである。こうしたレギュラー・チェーンに対してボランタリー・チェーンの場合には,各店舗が独立の小売業者であるため各地域の実情に応じた個性的な仕入れを並行して行いうるという長所の反面,本部の統制がきかず店舗経営がばらばらになるという欠陥がある。他方フランチャイズ・チェーンの場合は,強力な中央統制力というレギュラー・チェーンのメリットを生かす一方,各独立店のもつ人材,資本,個性などを生かし両者を組み合わせたメリットを追求しようとしているが,親企業の統制が強大すぎる場合には加盟店の反発を誘発するという欠点がある。
小売店
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チェーンストア」の意味・わかりやすい解説

チェーンストア
chain store

連鎖店。正規連鎖店 (レギュラー・チェーン) と任意連鎖店 (ボランタリー・チェーン) とに分かれる。前者は一つの会社が多くの小売店を所有して経営するものをいい,大規模小売商の一種である。仕入れ,物流,人的管理などは本部で統制する。後者は同一業種,または同一地域の独立小売商が相互に組合を結成して卸売業者や製造業者に対する取引交渉力を高めるとともに,物流システムや情報処理システムなどの効率的な構築・運用を行ない,参加企業の経営基盤を強化するものである。元来は 1920年代にアメリカ合衆国で発達したもので,シアーズ・ローバックがその代表として広く知られている。日本では高度経済成長期に急激に増えた。

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世界大百科事典(旧版)内のチェーンストアの言及

【A & P】より

…正称はグレート・アトランティック・アンド・パシフィック・ティー会社The Great Atlantic and Pacific Tea Company Inc.。アメリカの世界有数の食料品・雑貨中心の小売企業,チェーン・ストア。本社ニュージャージー州モントベール。…

【小売】より

…たとえば最寄店は食料品,医薬品,日用雑貨のような日常生活の必需品の小売機能を担当し,買回り店は装飾品,家具,家電製品のように消費者がその品質や価格をそのたびごとに比較して購入する商品の小売機能を,専門店は貴金属,宝石,特殊な趣味品あるいは一部のスポーツ用品などのように品質の限定された高級品の小売機能を担当している。また店舗の営業形態によっても担当される小売機能は分化されており,百貨店は主として中級品から高級品にいたる幅の広い価格の商品をあらゆる種類にわたって販売するという小売機能を,大型スーパーは中級品を主体とした標準化商品を,ディスカウント・ストアは大量生産された低価格商品の量販という機能を,さらにスーパーマーケットは食料品を主体とした小売機能を,チェーン・ストアは商品部門を限定した各種商品の小売機能をというように,各地域,人々の所得,人口差に合わせた多様な店舗が展開されて,それぞれの小売機能を果たしている。 このような小売機能を補助しているのが,小売業者を除く広義の商的・物的流通機関が担当する流通機能である。…

※「チェーンストア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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