ダービー(Abraham Darby)(読み)だーびー(英語表記)Abraham Darby

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ダービー(Abraham Darby)
だーびー
Abraham Darby
(1677―1717)

イギリスの製鉄発明家。木炭を燃料とするそれまでの高炉にかわり、初めてコークスを燃料とすることに成功した。オランダから鉄の砂型鋳造の技術を導入し、1707年、ブリストルで薄壁の鋳鉄の鍋(なべ)・壺(つぼ)の製造に成功した。翌1708年セバーン川上流コールブルックデールの放棄されていた高炉を買い、1709年コークスによる高炉操業を開始した。1717年没したとき息子は6歳であったので娘婿(むすめむこ)たちが経営を担当し、鋳鉄の料理鍋、フライパン、シチュー鍋、火格子類をつくり、ニューコメン蒸気機関の部品、鋳鉄管、トロッコ用車輪、鋳鉄軌道、その他さまざまに販路を広げた。1728年から事業に加わったダービー2世(1711―1763)の時代には、送風の改善によって高炉内温度が上昇し、石灰の大量添加による高温高塩基操業による脱硫が可能になり、錬鉄に精錬するのに適した材質銑鉄をも製造するようになり、コークス銑は鋳造用だけでなく、錬鉄用にも進出した。1768年から経営に参加したダービー3世(1750―1791)の時代にはコールブルックデール製鉄所はイギリス最大の製鉄所となり、ことに彼が中心となって建設された総重量400トンの鋳鉄を使用した鋳鉄橋は、構造材としての鉄の新しい用途を開いた。同製鉄所はコークス高炉メッカとなり、この技術は全世界へ広がっていった。コークス高炉はH・コートパドル法とともに製鉄法を木炭製鉄から石炭製鉄の時代に移行させた。この変革にはJ・ワットの蒸気機関が大きな役割を果たした。

中沢護人

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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