ダビドフ分裂(読み)ダビドフブンレツ

化学辞典 第2版 「ダビドフ分裂」の解説

ダビドフ分裂
ダビドフブンレツ
Davydov splitting

分子性結晶単位格子に2個以上の分子を含む場合,励起状態が二つ以上のバンドに分裂し,吸収スペクトル蛍光スペクトルの構造,偏光特性などに現れる.A.S. Davydovの解析によって説明されたのでこの名称がある.もっとも顕著なのは,第一吸収バンドの0-0遷移であり,アントラセン(単斜晶系,単位格子中2分子)のab面についてa軸偏光とb軸偏光との差は230 cm-1 であり,励起子の近似理論でほぼ定量的に説明される.テトラセンではこの分裂は約600 cm-1 と大きいので,薄膜ならば自然光でも分離観察される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダビドフ分裂」の意味・わかりやすい解説

ダビドフ分裂
ダビドフぶんれつ
Davydov splitting; factor group splitting

因子群分裂ともいう。気体液体で観測される1本の電子準位間の遷移に対する吸収線が,同じ物質から成る固体 (分子結晶) では2本以上に分れる現象をいう。 A.ダビドフにより発見された。分子結晶中で分子が方位を異にして配列する場合にこの分裂が起り,並進に対して等価でない n個の分子があると,n個のダビドフ多重項が生じる。この現象は,結晶をつくると励起状態が結晶全体で共有され,分子励起子をつくることに関連している。多くの分子結晶,たとえばベンゼン,ナフタリン,アントラセンなどで観測される。

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