ダット(Rajani Palme Dutt)(読み)だっと(英語表記)Rajani Palme Dutt

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ダット(Rajani Palme Dutt)
だっと
Rajani Palme Dutt
(1896―1974)

イギリス共産党指導者、ジャーナリスト。インドに関する著作でも知られる。カルカッタ(現コルカタ)の名門ダット一族出身のインド人医師を父、スウェーデン人を母としてケンブリッジに生まれる。R・C・ダットは祖父の兄弟。貧民の医者として労働者街に住んだ父の家は、訪英インド民族主義者のたまり場であった。オックスフォードのバリオール・カレッジ在学中に独立労働党に入党(1914)、マルクス主義者反戦運動に参加、投獄され退学処分を受ける。まもなく復学し優秀な成績で卒業(1918)。イギリス共産党創立に参加(1920)、『レイバー・マンスリー』を創刊、編集者となる(1921~1974)。党機関紙『ワーカーズ・ウィークリー』(1922~1924)、『デーリー・ワーカー』(1936~1938)の主筆、党執行委員会委員(1923~1965)、同副議長(1943~1961)、党副委員長(1961~1965)を歴任。第7回コミンテルン大会で執行委員候補となり(1935)、B・ブラッドリーとともにインドの統一戦線強化を訴えた『ダット‐ブラッドリー・テーゼ』を執筆(1936)。独立前夜初めてインドを訪れカルカッタのメーデー大会で演説(1946)。著書その他を通じてインド共産党発展に大きな影響を与えた。終生一貫して旧ソ連共産党を擁護した。

[古賀正則]

『石沢新二訳『マルクス主義者の見たインド』(1927・叢文閣)』『松原宏訳『ファシズム論』(1936・叢文閣)』『松原宏・庄司登訳『世界政治論』(1937・叢文閣)』『新時代叢書刊行会編『大英帝国の危機――崩れゆくイギリス帝国の分析』(1951・新時代社)』『大形孝平訳『現代インド』(1956・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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