ダオメー(民族)(読み)だおめー(英語表記)Dahomean

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダオメー(民族)」の意味・わかりやすい解説

ダオメー(民族)
だおめー
Dahomean

17世紀に西アフリカに栄えた君主独裁的専制国家ダオメー王国をつくった人々の末裔(まつえい)。1975年には国名ダオメーからベナンに変え、現在はベナン共和国の国民。このなかには多数の民族集団が含まれる。代表的な集団には、エウェ語系のフォン(193万)、アジャ(54万)、ヨルバ語系のナホ、ホリ(あわせて59万)、北部のバリバ(42万)などがある(人口は1992年)。このうちダオメー王国の最大の集団フォンがしばしばダオメー(ダオメー人)とよばれる。フォンは主として農耕民で、主要作物はトウモロコシヤムイモキャッサバオクラ綿花アブラヤシ、カカオなど。川と海岸部では漁業も行う。交易も盛んである。父系出自に基づくクランがあるが、このメンバーは広い地域に分散していて、重要なのは地域的にまとまった父系リネージ(共通の祖先からたどられる出自を同じくする集団)である。その最年長の男性がリネージ長となって、リネージ会議や儀礼を主導する権威をもつ。一夫多妻が普通で、夫は複数の妻のうちの1人と4日間からなるダオメーの「週」の間、いっしょに過ごし、この間彼女が夫の食事の世話をする。祖先崇拝のシステムが発達している。ダオメー王国の歴史的影響で社会階層が残っているが、祖霊もいくつかの種類に分かれ階層化されている。リネージの長の権威はリネージの祖霊との神秘的関係から生じると考えられている。各家族は祭壇や祖先の社(やしろ)をもち、頻繁な礼拝を通じて祖霊との密接な関係が保たれている。祖霊とは別の無数の神霊パンテオン(神殿)が形成され、神霊ごとの祭祀(さいし)集団が存在する。各集団のメンバーは、憑依(ひょうい)や卜占(ぼくせん)を通して神霊の意思が示されることにより選ばれる。メンバーは長期のイニシエーション(入社式)を通じて、その神霊に結び付けられた踊りや儀礼を学ぶ。彫刻もよく知られており、ヨルバのものと似ているが、優れた木彫や金工彫像がつくられている。

[加藤 泰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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