ダイラタンシー

デジタル大辞泉 「ダイラタンシー」の意味・読み・例文・類語

ダイラタンシー(dilatancy)

粉末固体粒子と液体からなる混合物が示す、異常な粘性。急激な外力に対しては固体のようにふるまい、ゆっくりとした外力に対しては液体のようにふるまう性質をさす。この性質をもつ流体ダイラタンシー流体ダイラタント流体)という。
[補説]演示実験などでは、ほぼ等量の水と片栗粉を混ぜたものが多く用いられる。ゆっくりかき混ぜるときはクリームのようだが、人がその上で素早く足踏みをする場合、固体のようになるために足は沈み込まず、表面で走ることもできる。

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精選版 日本国語大辞典 「ダイラタンシー」の意味・読み・例文・類語

ダイラタンシー

〘名〙 (dilatancy) 粒子が強い急激な外力によって液体を吸いこんでふくらんでかたまる現象。たとえば波打ちぎわの砂の上を歩くと、踏んだあたりが急に水を失うように見えることなどはその一例

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化学辞典 第2版 「ダイラタンシー」の解説

ダイラタンシー
ダイラタンシー
dilatancy

粉粒と水(一般には液体)からなる半固形状分散系に対し,急に外力を加えて変形するとき,表面付近の水が内部に吸収され,体積が膨張して固くなる現象.たとえば,海岸の波打ちぎわのぬれた砂を踏むと,水が吸い込まれて乾いたように見えることがある.O. Reynoldsはこの現象を“膨らむ”(dilate)という意味でダイラタンシーとよんだ.この現象は,密閉容器外圧を加えただけでは起こらない.比較的小さい固い粒子で,大きさがそろっている粉粒体の間で起こりやすい.これは,静置時には粉粒が比較的密な空間構造をとっていたものが,変形により空げきの大きい構造にかわり,このなかに液体が吸い込まれるためである.生のデンプンに少量の水を加えてかきまぜようとすると,大きな抵抗を示して水が吸い込まれ,割れ目を見ることがあるが,かきまぜるのを止めて容器を傾けると,容易に流動するのもこの種の現象である.そのほか,高分子溶液で,流動速度を増すに従って抵抗が増大する場合にも,ダイラタントであるということがある.このとき,必ずしも体積膨張が起こっているとは限らない.これを流動学的ダイラタンシーとよび,前述の場合を体積的ダイラタンシーとよぶことがある.

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岩石学辞典 「ダイラタンシー」の解説

ダイラタンシー

異常粘性の一種で,海辺の濡れた砂地を踏むと砂粒の間隙が拡がり,水が砂の中に吸い込まれて砂地は乾いて固くなる現象である.比較的形が均一で相互間の結合力の小さい粒子からなる分散系ではしばしば見ることができる.この現象では外力が加わらない場合には非常に密な充填状態にあり,外力が加わると逆に疎な充填状態に変化する.粒子間の間隙が多くなるために,変形の間に体積が増加して移動性が減少する.静置すると流動性があるが,力が加わると流動性がなくなる性質である.破砕性の堆積物では変形の間に充填が変化し,全体の量が増加し移動性が減少する.揺変性(thixotropy)はこの逆の現象[Reynolds : 1885, Hatch, et al. : 1971].

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイラタンシー」の意味・わかりやすい解説

ダイラタンシー
dilatancy

圧力の増加につれて,微小クラックが開口し,岩石が膨張すること。密な岩石では,圧力が破壊強度の 1/3~2/3になるとダイラタンシーが発生する。これは,微小割れ目が発生し,空隙が増加するためである。空隙に流体がある場合は,新たに生じた空隙に流体が移動して,空隙内の圧力が低下する。その結果,有効圧力が増加し,岩石の強度が増大する。これをダイラタンシー硬化という。

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法則の辞典 「ダイラタンシー」の解説

ダイラタンシー【dilatancy】

液体を含んだ粉末固体粒子に急激な外力を加えたとき,粒子系が固体化して流動性が失われ,体積が膨張するる現象.地震発生のメカニズムとして一時話題となったこともある.命名者は流体物理学者のレイノルズ(O. Reynolds)で,そのため別名をレイノルズ現象*ともいう.

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栄養・生化学辞典 「ダイラタンシー」の解説

ダイラタンシー

 デンプンに水を加えて練ったときにみられる種類の現象で,練るという外力によって一時的に流動性を失い固化するが,練ることをやめると再び流動性を取り戻すといった現象.

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世界大百科事典(旧版)内のダイラタンシーの言及

【レオロジー】より

…高分子物質の溶液も理想的な粘性流動とは異なる挙動(非ニュートン流動)を示す。
[チキソトロピーとダイラタンシー]
 静置状態では流動性をもたないゼリー状の物質に外力を加えると流動性を示し,さらに静置すれば元に戻ることがある。これは何回でも繰り返せる。…

※「ダイラタンシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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