タービニア号(読み)タービニアごう(英語表記)Turbinia

改訂新版 世界大百科事典 「タービニア号」の意味・わかりやすい解説

タービニア号 (タービニアごう)
Turbinia

世界で初めての蒸気タービン船。1894年,実用蒸気タービン発明者の一人であるイギリスのC.A.パーソンズによって建造された。排水量44.5トン。パーソンズは蒸気タービンの優秀性を宣伝するため,97年,スピットヘッドで行われたビクトリア女王在位60年記念の大観艦式においてタービニアを34.5ノットで走らせた。ねらいは成功し蒸気タービンは船舶用推進機関の一つとしてその地位確立した。蒸気タービンからは高速の回転力が得られるが,これに連結されるスクリュープロペラは,あまり高速で回転させるとキャビテーションを発生し性能が低下する。パーソンズはこの問題をタービニアにおいてスクリュープロペラの数を増やすことにより解決した。現在,ニューカスルの科学博物館内に保存されている。
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百科事典マイペディア 「タービニア号」の意味・わかりやすい解説

タービニア号【タービニアごう】

主機関に初めて蒸気タービンを使用した船。1894年英国で建造。C.パーソンズ製作の蒸気タービン3基(合計2400馬力)を装備,1897年のビクトリア女王在位60年記念の大観艦式で34.5ノットを出し,舶用高速機関としてのタービンの地位を確立。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タービニア号」の意味・わかりやすい解説

タービニア号
たーびにあごう
Turbinia

世界最初の蒸気タービン船。1897年、イギリスのパーソンズが設計し、新しい船の推進方式としてのタービンを世間に認識させるために建造した。その年のビクトリア女王在位60年記念の観艦式に、艦列の間を縫って当時としては記録破りの34.5ノットのスピードでデモンストレーションを行い、女王以下の目を奪った。タービニア号は3本の推進軸に、それぞれ3個ずつのプロペラを取り付け、キャビテーション(プロペラ部に生じる真空現象)を防いでいた。このデモンストレーションの結果、船舶用タービン機関は軍艦皮切りにして急激に普及した。現在、ニュー・カッスルの科学博物館に保存されている。

[茂在寅男]


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世界大百科事典(旧版)内のタービニア号の言及

【汽船】より

…エンジンのほうの変遷をみると,初めワットの蒸気機関が使われ,だんだん大型化して19世紀末には4段膨張4連成エンジンも造られたが,やがて高速化と大型化の要請から蒸気タービンに代わった。蒸気タービンを用いたタービン船の登場は19世紀の終りで,50トンにも満たないタービニア号に始まるが,わずか10年後の1907年には長さ240m,総トン数3万2000トン,6万8000馬力の豪華客船モレタニア号が出現している。一方,ディーゼルエンジンが船のエンジンとして用いられるようになったのは1905年ごろからで,日本でも昭和初期の太平洋客船浅間丸,竜田丸,鎌倉丸のほか,優秀貨物船に広く用いられ,ディーゼル船の比率は14年の0.5%から75年には75%までに増加した。…

※「タービニア号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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