日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ターナー(Victor W. Turner)
たーなー
Victor W. Turner
(1920―1983)
スコットランド生まれの人類学者。バージニア大学教授を務めた。マンチェスター大学修了後、ザンビアのンデンブ(デンブ)Ndembu人社会で詳細な実地調査研究を行う。それまでの静的な社会構造分析を中心としたアフリカ社会研究に対して、「社会劇」として記述・解読される社会過程の動的把握と、文化の根幹にかかわる儀礼と象徴の研究を推進し新しい次元を開いた。理論的にはファン・ヘネップの儀礼研究にみられる移行と境界状態の問題を発展させ、社会における境界状態に注目しつつ、地位や役割といった形で人間を区分する社会構造に対して、平等性と連帯性を強調する人間の存在様式(コミュニタス)を積極的な文化概念として提出した。社会は構造と反構造から構成されるとする、いわば「否定性」に着目するターナーの所説は、「未開社会」の枠を超えて、巡礼やカーニバルなど現代社会や歴史社会における文化現象をも人類学的分析の対象とし、人類学以外の分野にも大きな影響を与えている。
[永渕康之 2018年12月13日]
『冨倉光雄訳『儀礼の過程』(1976・思索社/新装版・1996・新思索社)』▽『梶原景昭訳『象徴と社会』(1981・紀伊國屋書店)』