タータン(英語表記)tartan

翻訳|tartan

精選版 日本国語大辞典 「タータン」の意味・読み・例文・類語

タータン

〘名〙 (tartan) いろいろな色の紡毛糸または梳毛糸を使って織った、格子柄綾織物。また、その格子模様もとスコットランド氏族を表わす紋章や儀式用の飾り章に用いられたもの。タータンチェック。〔舶来語便覧(1912)〕

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デジタル大辞泉 「タータン」の意味・読み・例文・類語

タータン(tartan)

多くの色を使った格子柄の綾織毛織物。また、その柄。もと、スコットランドで氏族を表す紋章や儀式用の飾り章に用いられたもの。タータンチェック

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改訂新版 世界大百科事典 「タータン」の意味・わかりやすい解説

タータン
tartan

本来イギリスのスコットランドの高地地方(ハイランド)で用いられてきた,さまざまの色糸を使った大柄の格子模様の毛織物をいう。タータンの語源は不明であるが,ケルト語ではブリーカンbreacanといい,チェックを指していた。現在にも伝わるキルトが17世紀にあらわれるまでは,人々はこのタータンを体に巻きつけたベルテッド・プラドbelted plaidと呼ばれるいでたちをしていた。タータンの柄はセットsettと呼ばれ,古くは草木染による2~3色の単純なチェックで,地方ごとに決まったタータン(ディストリクト・タータンdistrict tartan)があった。10世紀から11世紀にかけてのマルコム1世,2世の時代にスコットランド特有のクラン(氏族)制度が確立すると,それぞれのクラン・タータンが生まれた。織物業者は,このタータン柄の正確な記録のために,木版を作り保存に努めた。しかし名誉革命で王位を追われたジェームズ2世の子孫を正統な君主として支持するジャコバイトが,1746年クローデンの荒野でイングランド国王軍によって壊滅すると,翌年タータン禁止法が施行され,政治的弾圧とあいまって,タータン柄に関する記録も不明になり,古くからの木版も消失してしまった。1822年ジョージ4世がエジンバラを訪問した際,スコットランドの各領主はタータン着用を命じられ,これを契機にタータンが復活し,多くのクラン・タータン(モダン・タータン)を生むこととなった。現在エジンバラにあるスコットランド紋章院には,正当なタータン柄370点が登録されている。

 なお,クランによっては狩猟用,フォーマル用と別々に持っているところもある。その他軍隊用,聖職者用,ある地方の住民の着用するディストリクト・タータン,クランの称号をもたなくとも用いられるジェネラル・タータンなどがある。王室のローヤル・タータンや軍隊のミリタリー・タータンは,イギリスおよびイギリス連邦諸国では,厳密ではないが一般には着用しないものとされている。タータンを模した織物も作られるほどに各国で愛好され,日本でもタータン・チェックとも呼ばれて,シャツ,スカート,マフラー,帽子ほかに幅広く用いられている。
チェック
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タータン」の意味・わかりやすい解説

タータン
tartan

平織または斜文織による種々の色の大柄格子縞模様の織物。タータン・チェックは日本独自の呼称。 15世紀後半頃からスコットランドの高地地方では,格子柄の毛織物をタータンと呼んでいた。大氏族はクランタータンまたはディストリクトタータンといわれる各氏族特有の柄のタータンをもち,彼らの服装,すなわちキルトやプレード (肩掛け) ,ボンネット,靴下,リボンなどに使用した。大氏族が分家する際には,1~2本の縞を加えて新しいタータンをつくり,これをファミリータータンと呼んだ。基本色は緑,赤,暗青色,黄,白,黒で,いずれも植物染料による独特の深みのある配色であった。 1746年イギリス議会でこの民族服の禁止令が出るまで続き,82年の解令以後,スコットランドに限らず,広く世界中で親しまれる織り柄となった。

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百科事典マイペディア 「タータン」の意味・わかりやすい解説

タータン

多彩な色の格子模様およびその織物地。本来は綾織の毛織物で,10世紀以降英国スコットランドのクラン(氏族)が独自の模様を定めて使用してきたもの。現在もキルトなどにみられる。日本ではタータン・チェックとも呼ばれ,シャツ,スカート,マフラーなどに用いられる。
→関連項目チェック

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世界大百科事典(旧版)内のタータンの言及

【スコットランド】より

… 1707年の合同以来,文化面でもイングランド化がすすんでいるが,その反面,対抗意識が強い。スコットランド文化を代表するものはタータンバッグパイプ音楽,民族舞踊であろう。タータンはハイランドの住人のキルトなどの服装に用いられ,氏族clanによってその柄が異なっていた。…

※「タータン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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