タングステン酸(読み)タングステンサン

化学辞典 第2版 「タングステン酸」の解説

タングステン酸
タングステンサン
tungustic acid

H2WO4(249.87).IUPAC水素方式命名法によれば,テトラオキシドタングステン酸二水素.組成から,オルトタングステン酸塩に対応したオキソ酸形式の式が与えられているが,実質はWO3の一水和物WO3・H2Oである.二水和物もある.タングステン酸塩に,冷時,希酸を作用させると得られる白い沈殿は,WO3・2H2O(H2WO4・H2O)に相当する.これを放置するか,タングステン酸塩に熱時強酸を作用させると,黄色のWO3・H2Oが得られる.正八面体型のWO6が,頂点共有でつながった層状構造と考えられている.WO3・H2Oは黄色の斜方晶系結晶.密度5.5 g cm-3.冷水や希酸に難溶,ただし,HFには可溶,また,NaOHの濃い溶液には徐々に溶ける.熱水に微溶.加熱すると,2WO3・H2Oを経て,高温ではWO3になる.生成直後のWO3・2H2Oは,水,ことに熱水にはかなり溶けるが,不安定で,放置すると水を失い,WO3・H2Oとなる.[CAS 7783-03-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タングステン酸」の意味・わかりやすい解説

タングステン酸
タングステンさん
tungstic acid

化学式は H2WO4 。黄色または黄緑色粉末。水,酸に不溶であるが,フッ化水素酸には可溶。アルカリ溶液には徐々に溶ける。タングステン酸塩の製造原料,媒染剤などとして用いられる。また,イソポリ酸のパラタングステン酸またはメタタングステン酸のことをタングステン酸ということもある。

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