タレカット(英語表記)tarekat

改訂新版 世界大百科事典 「タレカット」の意味・わかりやすい解説

タレカット
tarekat

イスラム神秘主義教団タリーカマレー・インドネシア語で,その教えも指す。マレー世界へのイスラムの布教スーフィズムが果たした役割は大きく,すでに15世紀末にはマラッカスーフィー(神秘主義者)が活躍しているが,教団の組織は17世紀以後メッカ巡礼者によって導入された。マレーシアでは九つのタレカットが現存し,カーディリー,ナクシュバンディー,アフマディーが優勢であるが,スマトラのナクシュバンディーのように政治活動は行わず,穏健で非戦闘的である。教団全体を統率する指導者はなく,各地方のリーダーはシャイクとよばれ,カリスマ的な指導者で敬虔な生活を送る行者である。週・月・年ごとの祭りはジクル(唱名),踊りを中心としてシャイクの家あるいはモスクで行われるが,ザーウィヤ(修道場)はない。シャイクは村々を定期的に巡回して信者の結束をはかる。ときには宗教行政の末端であるイマーム(指導者)を兼ね,ポンドック(イスラム教育のための塾)と密接な関係をもつ。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタレカットの言及

【バンテン農民反乱】より

…植民地政府の対抗措置のために,目ざすバンテンの中心地セランを攻撃するまでにいたらず,7月30日には完全に鎮圧されてしまう短命のものであった。この一連の反乱行動は,16世紀以来のバンテン王国の伝統社会がオランダ支配の強化によって崩壊していく中で,税や労役の重い負担を負わせられ生活の困苦を強いられた大多数の農民の経済的不満と,イスラム教徒としての異教徒(カーフィル)支配への宗教的反感とが結合して,ことにハジ(メッカ巡礼者)を頂点とする師弟関係およびタレカット(タリーカ)と称する神秘性をもつ兄弟関係よりなる,イスラム集団の組織力に依拠する形で噴出したもので,20世紀の民族独立運動へ連続していくものを確かに内包していたといえよう。【森 弘之】。…

※「タレカット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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