タボル山(読み)タボルさん(英語表記)Har Tavor

改訂新版 世界大百科事典 「タボル山」の意味・わかりやすい解説

タボル[山]
Mount Tabor

イスラエルナザレの南東約10kmの平原にある山。標高588m。旧約聖書によると,前1200年ころ女士師デボラDeborahに率いられたイスラエル諸部族がこの山に陣をしいてカナン軍の戦車隊と戦い勝利を博したとされる(《士師記》4,5)。また古いキリスト教の伝承では,イエス弟子ペテロとヤコブおよびヤコブの兄弟ヨハネの前で急に姿が変わり,モーセ,エリヤと語ったといういわゆる〈キリストの変貌Transfiguration〉が起こった山とされている(《マタイによる福音書》17,《マルコによる福音書》9,《ルカによる福音書》9)。現在それを記念する大教会古代の教会の遺跡の上に建っている(1924竣工)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タボル山」の意味・わかりやすい解説

タボル山
タボルさん
Har Tavor

アラビア語ではトゥール Tur (山の意) 。イスラエル北部,低地ガリラヤ地域,エスドラエロン平野の端近くに位置する。標高 588mと低いが,聖書の記録のように,周囲から群を抜いてそびえている。山全体は森林におおわれ,ハイキングの好適地であるが,むしろ歴史的に有名である。前 13世紀の,エジプトラムセス2世碑文で最初に記録され,聖書のなかでも,イスラエルの勝利と結びつけられて関係が深い。4世紀に最初の聖堂が建設され,山上にはフランシスコ会ギリシア正教の聖堂がある。また,十字軍時代の城塞の跡も多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タボル山」の意味・わかりやすい解説

タボル山
たぼるさん
Mount Tabor

イスラエル北部、ガリラヤ地方にある山。ナザレの町の東9キロメートルに位置する。高度588メートル。平原にそそり立つ孤立円丘で、古代人は乳房のまろやかさに例えた。『旧約聖書』にも、力と尊厳の象徴としてその名が出るが、『新約聖書』にあるイエスがペテロら3人の弟子を伴って登ったという高い山に比定される。山頂にギリシア正教会などの宗教施設がある。

[末尾至行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android