日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイム(香料植物)」の意味・わかりやすい解説
タイム(香料植物)
たいむ
thyme
[学] Thymus vulgaris L.
シソ科(APG分類:シソ科)の小低木。南ヨーロッパ原産の香料植物。潮風を受ける乾燥した海岸丘陵地に適し、南ヨーロッパで栽培されている。茎は地をはい、直立した枝は高さ30センチメートルほどで、5~7ミリメートルの披針(ひしん)形の葉を多くつける。夏、枝先に淡紅紫色の小花が群がって開く。葉や若い枝、花などに強い芳香があり、和名をタチジャコウソウ(立麝香草)、またはキダチヒャクリコウ(木立百里香)という。芳香の精油成分はチモール、シメン、ピネン、リナロールなどである。ハーブ(香草)として古くから有名で、食品の香料や防腐剤として、薬品の原料や香料として利用されている。日本へは明治時代に渡来し、観賞用として花壇で栽培されている。
[星川清親 2021年9月17日]
食品
主産地はフランス、スペイン、ポルトガル、ギリシアであるが、アメリカで栽培されているものには葉の細いフレンチタイムと、葉の形のさまざまなレモンタイムがある。葉を乾燥させたものが香辛料として用いられ、芳香が非常に特徴的で、独特の薬味臭と舌をしびれさすような辛味がある。したがって、薬味としてハマグリや魚のチャウダーに用いたり、ソーセージ、肉や食鳥用のグレービーソース、フィッシュソース、フレッシュトマト、リキュールのベネディクティンの風味づけに使われる。ヨーロッパでは、昔からタイムには人間の能力を高める力があるといわれており、勇気と大胆さのシンボルともされ、「あなたはタイムの香りがする」ということばはその人に対する最高の賛辞として用いられた。
[齋藤 浩 2021年9月17日]