ソローキン(読み)そろーきん(英語表記)Pitirim Alexandrovich Sorokin

精選版 日本国語大辞典 「ソローキン」の意味・読み・例文・類語

ソローキン

(Pitirim Alexandrovich Sorokin ピチリーム=アレクサンドロビチ━) アメリカ社会学者。ロシア生まれ。広い見地を統合し、社会的・文化的体系動態としての社会学を築いた。主著革命の社会学」「社会移動論」。(一八八九‐一九六八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソローキン」の意味・わかりやすい解説

ソローキン
そろーきん
Pitirim Alexandrovich Sorokin
(1889―1968)

アメリカの社会学者。1月21日、ロシアのコミ州に生まれる。1914年ペテルブルグ大学を卒業、1917年同大学の最初の社会学教授になる。ケレンスキー内閣の閣僚、全ロシア農民ソビエトの委員、ロシア共和国会議ならびに憲法会議委員を務めたが、ボリシェビキに反対して1922年ソ連を去り、1923年アメリカに行き(1930年帰化)、ミネソタ大学教授を経て、1930年ハーバード大学に新設された社会学部の初代学部長になり、1959年定年退職。その間1936年に国際社会学会会長、1964年アメリカ社会学会会長になる。彼の主著は、文化と社会の変動法則を追究した『社会的・文化的動態論』全4巻(1937~1941)といえるが、そのほかロシア革命の体験を生かして書いた『革命の社会学』(1925)や『社会移動論』(1927)がある。

 また、都市農村社会学者としても有名で、ジンマーマンCarle Clark Zimmerman(1897―1983)との共著『都市・農村社会学原理』(1929。部分訳『都市と農村』)その他は、実証的方法を取り入れ、経験主義的社会学の確立に大きく貢献したものとして評価されている。第二次世界大戦後のソローキンは、西欧社会の没落兆候を認め、「友情学」を提唱して、連帯相互扶助を力説する社会哲学者になる。ほかに、『現代社会学理論』(1928)、『社会・文化・人格』(1947)、『ヒューマニティの再建』(1948)、『危機時代の社会哲学』(1950)などの著書がある。1968年2月10日死去。

[河村 望]

『北玲吉訳『ヒューマニティの再建』(1951・文芸春秋新社)』『P・A・ソローキン、C・C・ツィンマーマン著、京野正樹訳『都市と農村』(1977・巌南堂書店)』『P・A・ソローキン著、細川幹夫他訳『若い愛成熟した愛――比較文化的研究』(1985・広池学園出版部)』『P・A・ソローキン著、大矢根淳訳『災害における人と社会』(1998・文化書房博文社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ソローキン」の意味・わかりやすい解説

ソローキン
Pitirim Alexandrovich Sorokin
生没年:1889-1968

ロシア出身の社会学者。貧農の子に生まれる。ペテルブルグ大学(1917-22),ミネソタ大学(1924-30)の各教授を歴任後,ハーバード大学の初代社会学主任教授となる。母国でケレンスキー内閣の閣僚に就任するが,十月革命に敗れて投獄,23年には国外追放,アメリカに亡命した。その研究はまことに多産かつ多方面にわたり,社会成層と移動,革命研究,農村社会学,社会学説史,社会学一般理論などに及ぶ。今日でも,その《社会移動論》(1927),《社会・文化・パーソナリティ》(1947)の評価は高い。生活史そのものを通じてもいちはやくポスト・マルクス主義を経験した社会学者であり,スペンサーらの文化の直線的進化論やシュペングラーの循環論に対して,理想主義的・観念的・感覚的の三つの波動による循環論的歴史観は名高い。十数ヵ国語に通じた。かつてL.vonウィーゼは,ソローキンの偉大な作品に比べれば,コント,スペンサー,パレート,シュペングラーらの仕事は恣意的で空想的なもののようにみえると語った。しかしその晩年はむしろ不遇であった。自伝に《長い旅》(1963)がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソローキン」の意味・わかりやすい解説

ソローキン
Sorokin, Pitirim Aleksandrovich

[生]1889.1.21. コミ
[没]1968.2.10. マサチューセッツ,ウィンチェスター
ロシア生れのアメリカの社会学者。ペテルブルグ大学卒業後,母校で教鞭をとる。 1918年国会議員としてケレンスキー派に加担し,そのためロシア革命後死刑の宣告を受けたが,助命運動で国外追放となり,23年アメリカに亡命。以後ミネソタ大学,ハーバード大学で教鞭をとった。彼の社会学は総合社会学で,独特の観念論的有機体説に立つが,具体的には農村社会学や特にロシア革命の体験から社会文化変動論に本領がみられる。特に主著『社会移動』 Social Mobility (1927) は古典的な名著とされている。このほかに『革命の社会学』 Sociology of Revolution (25) ,『社会的文化的動学』 Social and Cultural Dynamics (4巻,37~41) ,総合社会学の構想を具体化したものとして,『社会,文化およびパーソナリティ』 Society,Culture and Personality (47) が有名。

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世界大百科事典(旧版)内のソローキンの言及

【階層】より

…階級に関する諸学説のうち,多元的指標を用い階級分析に対して数量的アプローチをとる人びとが,しだいに階級social classという語よりも階層social stratification(この用語はP.A.ソローキンがその著《社会移動論》(1927)で初めて使った)という語を多用するようになったことによって,階層研究と呼ばれる分野が形成されるようになった。したがって階層論は階級論の一形態であり,階級以外に特別に階層という研究対象があると考えるのは適切でない。…

【農村】より

…農業には比較的広い土地が必要なことから,散在する農場や農家の構成する小集落の形をなすことが多い。一般に地域社会は都市と農村という二つの類型に分けられるが,農村の特質を示すものとしての両者を区分する基準については,ソローキンが職業,環境,地域社会の規模,人口密度,人口の異質性,階層分化,人口移動,相互作用の型という8指標をあげたのをはじめ,多くの考え方が示されてきた。日本の場合,かつては市制施行地域が都市に,その他の郡部が農村に相当するとされていたが,今日では市制施行にあたって周辺の農村部までを含めて市域を設定することが多くなり,行政区域に基づいて都市と農村を区別することはできなくなった。…

※「ソローキン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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