ソト(民族)(読み)そと(英語表記)Sotho

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソト(民族)」の意味・わかりやすい解説

ソト(民族)
そと
Sotho

レソト王国南アフリカ共和国、ボツワナ共和国に居住するバントゥー系農耕民。本来は牧畜民で、北方から3波にわたる移住によって入ってきたと考えられている。定住後も牛の占める位置は大きく、財産や犠牲獣として重要視される。ソトは北ソト、南ソト、西ソトの三つの集団に分かれるが、このうちボツワナと南アのトランスバール州に住む西ソトはツワナの名で知られる。ツワナを除くソトの人口は240万(1970)。ツワナを除くソトは19世紀初頭まで小首長国に分かれてドラケンスベルク山脈ドラケンスバーグ山脈)の高地草原の全域に広がっていたが、1820年代に始まったズールーの王シャカの進軍渦中で中央集権的王国をつくりあげた。この王国はのちにイギリス保護領バストランドとなり、1966年レソト王国として独立した。しかし経済的には南アに完全に従属している。社会組織については、父系出自に基づく動物名をもったクランがあるが、婚姻規制とは関係していない。このクランの動物名はセボーゴとよばれ、あるセボーゴを名のる者はけっしてその動物を殺さず、その肉を食べたり毛皮を用いたりしてはいけない。どのいとことの結婚も可能であり、父系社会では例外的である父の兄弟子供との結婚でさえ許される。男女とも割礼(かつれい)を受け、男は山奥に、女は村の近くに隔離される。かつては割礼後、男は年齢組に組織され王国の軍隊をつくる基礎となった。

加藤 泰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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