ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼノン[ストア]」の意味・わかりやすい解説
ゼノン[ストア]
Zēnōn; Zeno the Stoic
[没]前262/前261. アテネ
ギリシアの哲学者,ストア派の祖。キプロスのゼノン,キティオンのゼノンともいわれる。若いときアテネを訪れクセノフォンの『ソクラテスの思い出』プラトンの『ソクラテスの弁明』を読む機会を得てソクラテスの人格に深く影響された。キュニコス派のクラテス,メガラ派のスティルポン,アカデメイアのクセノクラテス,ポレモンに師事したのちストア・ポイキレ (彩られた柱堂) に学校を開く (前 300頃) 。その節欲が諺として語られるほど彼の態度は厳格であり,質素で忍耐強い生活は有名であった。彼は哲学を論理学,自然学,倫理学の三つに分け,認識の真理性の基準を示す概念としてカタレプシス的表象,シュンカタテシスなどの新概念をつくった。倫理学が中心であり,人生の目標とすべき幸福は宇宙を支配する神の理性 (ロゴス) に従うことであり,もって不動心の境地にいたることであると説いた。論理学,自然学,倫理学,修辞学について多くの論文を書いたが現在は引用による断片が知られるのみである。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報