センリョウ(読み)せんりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「センリョウ」の意味・わかりやすい解説

センリョウ
せんりょう / 千両
[学] Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai

センリョウ科(APG分類:センリョウ科)の常緑低木。高さ0.5~1.2メートル。葉は対生し、単葉で革質、小さな托葉(たくよう)がある。6~7月、穂状花序を頂生する。花序は分枝し、花は両性黄緑色花被(かひ)を欠き、雄しべは1本で棒状雌しべの背面に合着する。果実球形で径約5ミリメートル、冬に赤く熟す。正月用の切り花として賞用される。黄色の果実をつけるものはキミノセンリョウとよばれる。常緑樹林下に生え、関東地方南部以西の本州から沖縄、および朝鮮半島、中国、インド、東南アジア分布センリョウ属は、このほかに中国南部、インド南部、スリランカに2種分布する。被子植物でありながら、茎の木部に道管を欠き、仮道管しかないので原始的被子植物の一群とも考えられている。

[大森雄治 2018年7月20日]

文化史

江戸時代の初期から栽培され、いけ花に使われた。『替花伝秘書(かわりはなでんひしょ)』(1661)には12月1日の心の項などで「せんりうけ」と出る。センリョウ花の意味である。『立花大全(りっかだいぜん)』(1683)は、水木の心(しん)、前置(まえおき)に用いる類、下にばかり用いる類にあげ、せんりゃう、仙蓼と綴(つづ)る。『抛入花伝書(なげいればなでんしょ)』(1684)は仙蓼を葉は蓼(たで)に等しと解説する。『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』(1695)も仙蓼と表記し、『花譜』(1694)は珊瑚(さんご)と綴る。仙蓼が千両に変わるのは江戸の後期で、万両などと対比した縁起物とされてからである。現在ワシントン条約で、センリョウの野生品の国際的商取引は自然保護のため禁止されている。

[湯浅浩史]


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改訂新版 世界大百科事典 「センリョウ」の意味・わかりやすい解説

センリョウ (千両)
Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai

暖地の常緑広葉樹林下に生えるセンリョウ科の常緑低木。赤い果実のついた枝を,正月の生花につかう。和名ヤブコウジ科のマンリョウ(万両)に対してつけられた。茎は直立してまばらに分枝し,高さ0.7~1m。葉は対生し,やや肉質で長楕円形,縁にとがる鋸歯があり,長さ6~15cm,幅2~6cm,濃い緑色でつやがある。6~7月,枝先にまばらに分枝する花序をだし,多くの黄緑色の小さな花をつける。花は花被がなく,1本のめしべと,そのわきに付着する1本のおしべとからなる。三角状の苞葉のわきに1本の緑色のめしべがあり,子房のわきに1本のおしべがつく。葯は黄色,2室で縦に裂ける。果実は球形で冬に赤く熟し,径5~6mm。本州の関東地方以南,四国,九州,沖縄から東南アジアに広く分布する。

 日本では観賞用として切花や庭木にされ,垣根下や石組みわきなどの日陰に植えられる。繁殖は株分け,挿木,実生。変種に果実が黄色のキミノセンリョウがある。正月用切花の園芸品種として,早生のオオシオと晩生で小型のコシオとがあり,年末から出荷される。

 センリョウ属Sarcandraは3種あり,東アジアの暖帯~熱帯に分布する。原始的な被子植物の一つと考えられている。
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百科事典マイペディア 「センリョウ」の意味・わかりやすい解説

センリョウ

センリョウ科の常緑小低木。関東地方〜沖縄,東南アジアに分布。常緑広葉樹林内にはえる。茎は少し枝分れして,高さ70cm内外,節は隆起し,長楕円形の葉を対生する。夏,黄緑色の花が枝先に短い穂状につく。花被はなく,おしべ,めしべともに1個。果実は球形,肉質で径約5〜6mm,冬に赤〜黄色に熟す。果実は観賞用,生花とする。名前はヤブコウジ科のマンリョウに対してついたもの。

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