セルロース誘導体(読み)セルロースユウドウタイ

化学辞典 第2版 「セルロース誘導体」の解説

セルロース誘導体
セルロースユウドウタイ
cellulose derivative

セルロースD-グルコースがβ-1,4結合した親水性の直鎖状高分子であり,構成するグルコース基本単位には2位および3位に第二級ヒドロキシ基,6位には第一級ヒドロキシ基という,三つの異なる性質のヒドロキシ基を有している.これらのヒドロキシ基間の水素結合がセルロース分子内および分子間で形成されるため,セルロース自身は比較的剛直な性質を有しており,水,有機溶剤などに溶解することもない.このようなセルロース分子中のヒドロキシ基に,エーテル結合あるいはエステル結合で異なる置換基を導入することによって,溶解性,熱的性質,化学的性質などの異なる多様なセルロース誘導体が得られる.セルロース誘導体の性質は,セルロース自身の重合度,置換度,置換基分布などにもいちじるしく依存する.セルロース誘導体はセルロースエーテル類とセルロースエステル類に大別される.セルロースの誘導体化技術の進展には,各種セルロース溶剤の発見が大きく寄与した.セルロース溶剤の作用によってセルロース中の水素結合が切断され,セルロースは溶剤中に溶解する.そのため,誘導体化反応は均一系で進行することとなり,不均一系の場合に比較して反応性が向上する.セルロース誘導体の用途は,誘導体の種類によってフィルム繊維プラスチック塗料火薬,乳化安定剤など,非常に多様であるが,セルロースキサントゲン酸塩にして,それからセルロースを糸あるいはフィルム状に再生させて(再生セルロース)使用する場合もある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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