セフェム系抗生物質(読み)セフェムケイコウセイブッシツ

デジタル大辞泉 「セフェム系抗生物質」の意味・読み・例文・類語

セフェムけい‐こうせいぶっしつ〔‐カウセイブツシツ〕【セフェム系抗生物質】

cefems antibiotics》ベータラクタム系の抗生物質。多くのグラム陽性菌陰性菌に作用する。細菌の細胞壁の合成を阻害すると考えられている。

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病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「セフェム系抗生物質」の解説

セフェム系抗生物質

製品名
《セフカペンピボキシル塩酸塩水和物製剤》
セフカペンピボキシル塩酸塩(沢井製薬、シー・エイチ・オー新薬、辰巳化学、長生堂製薬、東和薬品、日医工、日医工ファーマ、日本ジェネリック、ファイザー、、マイラン製薬、陽進堂)
セフカペンピボキシル塩酸塩小児用(沢井製薬、辰巳化学、長生堂製薬、東和薬品、日医工、日医工ファーマ、日本ジェネリック、ファイザー、マイラン製薬、陽進堂)
フロモックス塩野義製薬
フロモックス小児用(塩野義製薬)
《セファクロル製剤》
L-ケフラール(塩野義製薬、共和薬品工業)
ケフラール(塩野義製薬、共和薬品工業)
ケフラール小児用(塩野義製薬、共和薬品工業)
セファクロル(沢井製薬、シオノケミカル、あゆみ製薬、辰巳化学、長生堂製薬、東和薬品、日医工、日本ジェネリック)
セファクロル小児用(沢井製薬、長生堂製薬、日本ジェネリック)
トキクロル(コーアイセイ)
《セファレキシン製剤》
L‐ケフレックス(塩野義製薬、共和薬品工業)
L‐ケフレックス小児用(塩野義製薬、共和薬品工業)
ケフレックス(塩野義製薬、共和薬品工業)
セファレキシン(長生堂製薬、日本ジェネリック、日医工、東和薬品、ジェイドルク)
セファレキシン小児用(日医工)
センセファリン(武田薬品工業)
ラリキシン(大正ファーマ、富山化学工業)
ラリキシン小児用(大正ファーマ、富山化学工業)
《セフィキシム製剤》
セフィーナ(武田テバファーマ、武田薬品工業)
セフスパン(長生堂製薬、日本ジェネリック)
《セフジトレンピボキシル製剤》
セフジトレンピボキシル(沢井製薬、東和薬品、日医工、日医工ファーマ、長生堂製薬、日本ジェネリック、Meiji Seika ファルマ、大蔵製薬)
セフジトレンピボキシル小児用(東和薬品、日医工、日医工ファーマ、沢井製薬、長生堂製薬、日本ジェネリック、メディサ新薬、エルメッド、エーザイ、Meiji Seika ファルマ、大蔵製薬)
メイアクトMS(Meiji Seika ファルマ)
メイアクトMS小児用(Meiji Seika ファルマ)
《セフジニル製剤》
セフジニル(沢井製薬、武田テバファーマ、武田テバ薬品、武田薬品工業、辰巳化学、長生堂製薬、日医工、日本ジェネリック、ファイザー、マイラン製薬、陽進堂、東和薬品)
セフジニル小児用(沢井製薬、長生堂製薬、日医工、日本ジェネリック、ファイザー、マイラン製薬、陽進堂、東和薬品、武田テバファーマ、武田薬品工業)
セフゾン(アステラス製薬)
セフゾン小児用(アステラス製薬)
《セフチゾキシムナトリウム製剤》
エポセリン(長生堂製薬、日本ジェネリック)
《セフチブテン水和物製剤》
セフテム(塩野義製薬)
《セフテラムピボキシル製剤》
セフテラムピボキシル小児用(日医工)
トミロン(大正ファーマ、昭和薬品化工、富山化学工業)
トミロン小児用(大正ファーマ、富山化学工業)
《セフポドキシムプロキセチル製剤》
セフポドキシムプロキセチル(沢井製薬、辰巳化学、長生堂製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、東和薬品、日本ジェネリック)
セフポドキシムプロキセチルDS小児用(沢井製薬)
バナン(グラクソ・スミスクライン、第一三共)
《セフロキサジン水和物製剤》
オラスポア小児用(アルフレッサファーマ)
《セフロキシムアキセチル製剤》
オラセフ(グラクソ・スミスクライン、第一三共)

 各種の細菌によってひきおこされた感染症の治療に使われる薬です。


 広域用ペニシリン剤と同じように、細菌の細胞壁を破壊して細菌を死滅させ、しかも人体の細胞には作用しないので、抗生物質に対するアレルギー症状以外には、これといった副作用がありません。


 さらに、ペニシリン・ショックなどのショック症状をおこすことが少ないため、現在では抗生物質の生産量の多くがこのセフェム系で占められています。


 黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌溶血性連鎖球菌ようけつせいれんさきゅうきん、大腸菌、クレブシエラ菌、淋菌りんきん、腸球菌などの細菌によって引きおこされた感染症(肺炎気管支炎膀胱炎ぼうこうえん腎盂腎炎じんうじんえん膿皮症のうひしょう瘭疽ひょうそ咽頭炎いんとうえん扁桃炎へんとうえん中耳炎麦粒腫ばくりゅうしゅ胆嚢炎たんのうえんリンパ節炎細菌性心内膜炎猩紅熱しょうこうねつ敗血症乳腺炎副鼻腔炎歯周組織炎歯冠周囲炎顎炎がくえん)の治療に使われます。


 セファレキシン製剤は、グラム陽性菌・グラム陰性菌を死滅させる効力があって、胃腸からの吸収がよい薬なので、多くの感染症に用いられています。ただし、緑膿菌りょくのうきん変形菌などの弱毒菌に対しては効果がありません。


 セファクロル製剤セフィキシム製剤は、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではない呼吸器などの感染菌)の治療によく用いられています。


 セフジニル製剤は、従来のセフェム系抗生物質に比べて、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などのグラム陽性菌に強い抗菌力を示し、広範囲の感染症の治療に使われます。


 セフチブテン水和物製剤は、とくにグラム陰性菌による感染症(気管支炎、慢性気道感染症、尿路感染症など)に効果があります。


 また、セフロキシムアキセチル製剤のオラセフは、腸に入ってから効力を発揮するので、副作用の少ない薬です。


①過敏症状(発疹ほっしんじんましん、かゆみ、顔のむくみ、などのアレルギー症状)、ショック、アナフィラキシー急性腎障害が現れることがあります。このような症状が現れたときは使用を中止し、すぐ医師に相談してください。


 薬によっては、偽膜性大腸炎、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死えし融解症、間質性肺炎、好酸球性肺炎、肝障害、黄疸おうだん、溶血性貧血、血小板減少、汎血球減少、無顆粒球症セフカペンピボキシル塩酸塩水和物製剤セフテラムピボキシル製剤の細粒では低カルニチン血症に伴う低血糖、セフカペンピボキシル塩酸塩水和物製剤セフジニル製剤では劇症肝炎セフカペンピボキシル塩酸塩水和物では横紋筋融解症、紅皮症、出血性大腸炎などがおこることがあります。このようなときは服用を中止し、すぐ医師に相談してください。


吐き気嘔吐おうと、下痢、腹痛、食欲不振、口内炎、頭痛、倦怠感けんたいかんなどがおこることがあります。このような症状がおこったときは、医師に相談してください。


 また、下痢がおこったときは、かってに市販の下痢止めを使用しないでください。


①いろいろな剤型があり、食後の服用が原則です。1日あるいは1回の服用量、服用時間については、医師の指示をきちんと守り、かってに中止、減量・増量しないでください。


 セフチゾキシムナトリウム製剤は坐剤です。坐剤ざざいを使用するときは、排便後、あるいは便意のないときに使用してください〔坐剤のじょうずな使用法〕。


②血液中の濃度が一定でなければ効果がない薬なので、指示された時間ごとに使用することが大切です。かってに減量したり服用を中止すると、薬が効かなくなるばかりでなく、症状を悪化させたり、新たな感染症を引きおこすことにもなりかねません。


③以前にセフェム系やペニシリン系の抗生物質を使用して過敏症状をおこしたことがある人、家族にアレルギーのある人は、あらかじめその旨を医師に報告してください。


肝臓腎臓じんぞう・胃腸・血液に障害のある人、妊婦あるいは現在妊娠している可能性のある人には、使用量を減らすといった配慮をしないと、病状を悪化させたり、胎児たいじに悪影響を及ぼしかねないので、その旨を医師に報告してください。


⑤長期間の服用が必要な人には、副作用を早期にチェックするための定期的な検査(肝機能、腎機能、血液などの検査)が指示されます。必ず受けてください。


 セフポドキシムプロキセチル製剤アルミニウムまたはマグネシウムが含まれた制酸剤との併用は、この薬剤の効果を弱めることがあるので、服用時間に注意してください。

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化学辞典 第2版 「セフェム系抗生物質」の解説

セフェム系抗生物質
セフェムケイコウセイブッシツ
cephem antibiotics

真菌Cephalosporium acremoniumが産生する抗生物質セファロスポリンCは,グラム陽性菌,グラム陰性菌に抗菌活性を示し,この側鎖をかえた多くの化合物が合成され,セフェム系またはセファロスポリン系抗生物質とよばれる.セファロスポリンCの基本骨格を図示する.さらにペニシリン系抗生物質や,ほかのβ-ラクタム環をもつ化合物を合わせてβ-ラクタム系抗生物質と総称される.セファロスポリンC:C16H21N3O8S(415.42),UV(水)λmax 260 nm(ε 7800),無色の結晶性粉末で,全合成もされており,酸性水溶液中ではペニシリンより安定である.臨床でよく使用される半合成セフェム系抗生物質には,セファレキシン,セファクロール,セファゾリン,セフォタキシムなど数多くの種類があり,副作用の頻度が低く,安全性の高い薬として,臨床上もっともよく使用されている.作用機序は,細菌の細胞壁を構成するペニシリン結合タンパク質(ペプチドグリカン層の架橋酵素)に結合して,この酵素の阻害により,細菌を破壊する殺菌作用である.ヒトの細胞には細胞壁がないので,細菌のみに選択的に毒性を示す.マウスに100 mg を静注しても毒性を示さない.[CAS 61-24-5:セファロスポリンC]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セフェム系抗生物質」の意味・わかりやすい解説

セフェム系抗生物質
セフェムけいこうせいぶっしつ

b-ラクタム系抗生物質の一つで,ペニシリン骨格中の5員環が6員環になった構造をもつ。 1945年に放線菌より単離されたセファロスポリンが耐性菌にも活性を示したことをきっかけに開発,研究が進められた。その生物学的特徴から,ペニシリン耐性菌を含むグラム陽性菌に強い活性を示す第1世代薬,b-ラクタマーゼに対する安定性の強化とともにグラム陰性菌に対する活性も併せもつ第2世代薬,グラム陰性菌に対する活性の増加とともに酵素に対する安定性も増した第3世代薬に分類される。さらに近年,黄色ブドウ球菌に対する抗菌力にすぐれ経口剤として投与可能な第4世代ともいえる薬剤も開発されている。

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