スーチョワン(四川)盆地(読み)スーチョワンぼんち(英語表記)Sichuan pendi

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

スーチョワン(四川)盆地
スーチョワンぼんち
Sichuan pendi

中国南部,スーチョワン (四川) 省東部を占める大盆地。面積は約 20万 km2に達する。紫紅色の砂岩,頁岩が広く分布するので,赤色盆地とも呼ばれている。北はミン (岷) 山,ターパー (大巴) 山,西はチュンライ山,東はウー (巫) 山,南はターロウ (大婁) 山などに囲まれ,南西端には名山として知られるオーメイ (峨眉) 山がそびえる。平地は7%にすぎず,大部分は波状に起伏する丘陵と低山である。平均標高は 300~600mで,北から南に低下する。チャン (長) 江が南縁を東流し,支流のミン江,トー (沱) 江,チヤリン (嘉陵) 江などが南流して,灌漑水運,水力発電に利用されている。年降水量は 1000mm前後で春から夏に多雨。月平均気温は3~8℃ (1月) ,25~28℃ (7月) である。霧の日が多く太陽が珍しいという意味で,「蜀犬日に吠ゆ」の諺が生れた。土壌は肥沃で,西端のチョントー (成都) 平原などには古くから灌漑施設も発達しており,「天府の国」と呼ばれてきた。水稲コムギトウモロコシサツマイモなどの食糧作物と,サトウキビワタ,カラムシ,アブラナの栽培が多く,養蚕も盛んである。丘陵や山地では桐油,漆,茶,白ろう,竹材の生産が多く,漢方薬材も豊富である。地下資源は中央にスーチョワン中部油田があって莫大な石油と天然ガスが埋蔵されているほか,鉄,石炭,塩の埋蔵量も多い。これらの資源を利用して製鉄,機械,石油化学,紡織などの近代的工場が建設され,チョントー市,チョンチン (重慶) 市,ツーコン (自貢) 市などの重化学工業都市が成立している。閉鎖的な地形のため,近世まで外部との交通は,陸路は蜀の桟道,チャン江による水路はサン (三) 峡の難所を越えなければならなかった。現在は鉄道は4線が乗入れており,サン峡も 1000t級の船が航行できるようになった。

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