スワラージ(英語表記)Swarāj

改訂新版 世界大百科事典 「スワラージ」の意味・わかりやすい解説

スワラージ
Swarāj

インド諸語で〈自己の支配統治〉を意味し,スワラージャともいう。すでに17世紀後半のインド西部マラーター王国の創建者シバージー・ボーンスレーが,ムガル朝に対抗する独立ヒンドゥー国家の建設をスワラージャの語で表現していた。しかし近現代インド史では一般に〈民族の(政治的)独立〉を意味するといってよい。1905年から始まるベンガル分割反対闘争の中でマハーラーシュトラティラクがスワラージのスローガンを打ち出し,外国商品ボイコット,インド産業の発展奨励をうたうスワデーシーおよび民族教育をその目的達成のための具体的活動プログラムとした。このプログラムは06年の国民会議派カルカッタ大会で議長ダーダーバーイー・ナオロージーによって提起され,採択された。一時,英語の〈ホーム・ルール(自治)〉の語にとって代わられるが,このスワラージはいわばインド民族運動における象徴的スローガンであり,27年の国民会議派マドラス大会でサイモン委員会ボイコットをうたい,〈プールナ・スワラージ(完全独立)〉を国民会議派の目標とすることが規定された。29年のラホール大会でも〈自治領地法〉が否定され,改めてプールナ・スワラージを政治目標として採択している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スワラージ」の意味・わかりやすい解説

スワラージ
すわらーじ
Swarāj

インド諸語で「自己の支配」を意味する。マラータ王国の創始者シバージーは、ムガル帝国に対抗するヒンドゥーの独立国家をスワラージャと表現したが、近現代インド史では広く「民族の独立」を意味する。1905年からのベンガル分割反対闘争のなかでティラクらが政治スローガンとして打ち出し、翌年の国民会議派カルカッタ大会で、初めて公式に政治目標として採択された。一時英語の「ホーム・ルール」にとってかわられるが、27年にはサイモン委員会ボイコット運動のなかで国民会議派の目標が「プールナ・スワラージ」(完全独立)と規定され、29年の国民会議派ラホール大会でも「自治領地位」を否定し、このプールナ・スワラージを政治目標として採択した。

内藤雅雄]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「スワラージ」の解説

スワラージ
Swarāj

「みずからの支配」の意。イギリス植民地期のインドで自治,独立の意味で用いられた。ベンガル分割反対運動の盛り上がりを受けて,1906年のインド国民会議派大会では,外国製品ボイコット,スワデーシー,民族教育と並び,スワラージに関する決議が採択された。しかしその自治の内容をめぐっては解釈が分かれた。29年になると,国民会議派はプールナ・スワラージ(完全独立)を政治目標として定めた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「スワラージ」の解説

スワラージ
Swaraj

スワデーシーとともにインド独立運動の中心目標の1つである「自治獲得」のこと
自治を意味するヒンディー語。1906年ベンガル分割令に反対する国民会議派の大会で提唱されたスローガンで,インド人自身のインド統治を主張。1919年以来,会議派内で合法的自治獲得をめざした一派をさすこともある。1929年以降は,より急進的なプールナ−スワラージ(完全独立)が運動の目標となった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スワラージ」の意味・わかりやすい解説

スワラージ
Swarāj

インドの言葉で自治,独立を意味する。 1906年,イギリスによるベンガル分割法に対する抗議運動のなかでスワラージが唱えられ,次第に植民地統治のもとの自治の拡大から,イギリスからの独立の要求となって,言葉の意味が変り,29年以後にはプールナ・スワラージ (完全独立) が叫ばれた。

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