スリ(読み)すり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スリ」の意味・わかりやすい解説

スリ
すり
Pickpocket

フランス映画。1959年作品。監督ロベール・ブレッソン。犯罪と承知のうえでスリ行為を重ねる孤独なインテリ青年の生き方とその顛末(てんまつ)を、冷徹な正確さで描写する。心理主義的な感情表現や劇的な抑揚をことごとく排した禁欲的な手法によって、罪と罰、贖罪(しょくざい)などのテーマを浮かび上がらせるブレッソンの代表作である。非職業俳優の起用、スリを働く手と一連の鮮やかな手際を、その即物的な官能性においてとらえる凝視まなざし、厳格な画面作り、音の緻密(ちみつ)な構成、切れ味の鋭い編集など、単純明晰(めいせき)で一切の無駄がなく、力強い独特のスタイルが高い評価を受けた。1950年代に確立したこのような映画作りの美学をブレッソンは以後も貫いていく。

[伊津野知多]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スリ」の意味・わかりやすい解説

スリ

日本音楽の用語。「摺」「擦」などの字をあてる。 (1) 三味線では,左手で弦をすって余韻を出すポルタメント的な奏法。地歌では特に多用され,棹の上の方へすって音高を下げていくスリ上げと,胴の方へすって音高を上げていくスリ下げとあり,両方を組合せた場合もある。長唄三味線では,急速にすって出す余韻が特に不安定なときは,コキといって区別することもあり,なかでもコキ上げといえば,あまり勘所にこだわらずに左手をスリ上げながら同時に撥 (ばち) で弾いていくグリッサンド風の奏法をいい,コキ下げといえば開放弦の前打音をスリ下げるように左手の指を離して弾くことをいう。また,ハジキスクイの奏法と組合わされることもある。 (2) 箏では,スリヅメといって人差指中指の琴爪の脇で弦をこすって弾く,ズーズーと聞える騒音的奏法をいう。 (3) 摺鼓 (すりつづみ) の奏法。 (4) 摺鉦 (すりがね) の奏法。民俗芸能などの鉦で,その裏側をすって,縁に当てて打鳴らす。

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デジタル大辞泉プラス 「スリ」の解説

スリ

2000年公開の日本映画。監督・脚本黒木和雄、脚本:真辺克彦ほか。出演:原田芳雄、風吹ジュン、真野きりな、柏原収史、石橋蓮司、伊佐山ひろ子、香川照之ほか。第43回ブルーリボン賞助演男優賞(香川照之)ほか受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のスリの言及

【三味線】より

…箏のコロリンを模した奏法。(7)スリまたはコキ 右手で弾いたあと,糸を押さえた左手指を移動させる,ポルタメント奏法。余韻の音高を高めたり低めたりするが,種目によって,さらに細分化されたいろいろな奏法がある。…

※「スリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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