スポーツ貧血(読み)すぽーつひんけつ(英語表記)sports anemia

知恵蔵 「スポーツ貧血」の解説

スポーツ貧血

運動による血液の激しい循環や、運動時の体重衝撃などの物理的原因赤血球が破壊されたり、運動による乳酸発生に伴う末梢血pH(水素イオン濃度)低下や、脂質過酸化による赤血球膜の脆弱(ぜいじゃく)化といった化学的原因で、溶血が増大して起こると考えられる貧血症状をいう。一般に女子スポーツ選手に多発するが、男子選手にも少なくない。運動による筋肉の損傷、それに伴うミオグロビン鉄の損失、体内の鉄貯蔵量の低下も、スポーツ貧血発生の間接的要因となる。鉄は体内ではたんぱく質に結合して働くので、治すにはレジスタンス運動でたんぱく質合成を刺激することが必要。また、夕食で赤身の肉や魚肉レバーなど鉄含有食品や鉄剤を取り、食後に、鉄の吸収を促進するビタミンCと、クエン酸を含む柑橘(かんきつ)類やそのジュースを取る。逆に、鉄の吸収を阻害する食物繊維、フィチン酸蓚酸(しゅうさん)、タンニンなどを、取り合わせないように注意する。

(鈴木正成 早稲田大学スポーツ科学学術院特任教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スポーツ貧血」の意味・わかりやすい解説

スポーツ貧血
スポーツひんけつ
sports anemia

スポーツ選手には意外に貧血が多い。特に長距離選手や女子選手に多く見られる。多くは,若い女性にありがちな鉄欠乏性貧血で,食事からの鉄摂取不足と発汗などによる鉄排せつ量の増加,あるいは運動量と栄養摂取量のアンバランスが原因と考えられている。ほかに,ランニングなどの衝撃で足底毛細血管を流れる血液の赤血球が機械的に破壊され,溶血を起こすため貧血になることもある。

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