スパーク(Muriel Spark)(読み)すぱーく(英語表記)Muriel Spark

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

スパーク(Muriel Spark)
すぱーく
Muriel Spark
(1918―2006)

イギリスの女流小説家。エジンバラに生まれ、同地の長老教会派の女学校を卒業、中央アフリカで数年を過ごし、第二次世界大戦中は外務省の政治情報部に勤める。二つの詩の雑誌の編集に携わったあと、『オブザーバー』誌の短編小説コンクールに入選。長編『慰めるものたち』(1957)で文壇に認められ、以後ヒッチコックばりのスリラー仕立ての笑いに満ちたカトリック小説を次々に発表。代表作は、G・グリーンとE・ウォーの2人のカトリック系の先輩作家から激賞された『死を忘れるな』(1959)と、のちに映画化された『ミス・ブロウディの青春』(1962)であろうが、『マンデルバウム門』(1965)では政治的な主題にも挑んでいる。『運転席』(1970)、『邪魔をしないで』(1971)などでは笑いが乏しくなり、神による暗殺とでもいうべき不気味な設定で形而上(けいじじょう)的な恐怖に満ちた深淵(しんえん)を描くようになった。そして『乗取り』(1976)、『領土権』(1979)などでは、悪と、これに狡智(こうち)をもって対抗する者との二元的な図式が劇的に描かれている。

[出淵 博]

『深町真理子訳『運転席』(1972・早川書房)』『深町真理子訳『邪魔をしないで』(1981・早川書房)』『岡照雄訳『ミス・ブロウディの青春』(1973・筑摩書房)』『永川玲二訳『死を忘れるな』(1990・白水社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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