ストロファンツス(読み)すとろふぁんつす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストロファンツス」の意味・わかりやすい解説

ストロファンツス
すとろふぁんつす
[学] Strophanthus

キョウチクトウ科(APG分類:キョウチクトウ科)の1属で、低木あるいはつる性。アフリカと東南アジアに分布するが、この属の種子は一般に性が強いために、古くから矢毒として用いられてきた。葉は対生し(2枚の葉が一つの節につく)、花は比較的大きく、集散花序となって頂生する。(がく)は5裂し、内面には毛(せんもう)がある。花冠は漏斗(ろうと)状をなし、花筒は短く、裂片はやや重なり、ときに末端は尾状に長く伸びてねじれる。心皮は2個で胚珠(はいしゅ)は多く、袋果(たいかは)長楕円(ちょうだえん)形あるいは細長くて堅い。種子は扁平(へんぺい)な披針(ひしん)形で上端は細くなり、その先に羽毛状の長い毛を房状につける。アフリカ東部のタンザニアを探検したリビングストンの報告(1865)により、初めて矢毒の原料がストロファンツス・コンベS. kombe Oliv.の種子であることがわかった。このほか、アフリカ中西部産のヒスピーダスS. hispidus DC.、グラーツスS. gratus (Wall. et Hook.) Baill.などが有名で、これらの種子に含まれているストロファンチンは強心剤として心機能不全、急性心臓失調などの治療に優れた効果を示す。ストロファンチンはジギタリス製剤と異なり、経口では大部分が分解してしまうため、静脈注射が適用される。また、排泄(はいせつ)がきわめて早いため、薬用成分が蓄積する心配はないが、長期にわたる治療は避けられている。

[長沢元夫 2021年6月21日]

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世界大百科事典 第2版 「ストロファンツス」の意味・わかりやすい解説

ストロファンツス【Strophanthus】

アフリカで矢毒に利用される種を含むキョウチクトウ科キンリュウカ属の低木。つる性となるものが多いが,乳液を有しない。葉は対生で羽状脈を有する。花は頂生の集散花序で5数。花冠は漏斗状あるいは鐘形,色はいろいろで美しい。花冠裂片5枚はねじれ,ひじょうに長い尾状の5本の付属物がある。萼は内面基部に多くの腺を有し,裂片は狭三角形で小型,先端はとがる。おしべは花筒の先端につく。果実は二つの線形の分果からなり,種子は多数で基部に早落性の種髪を有し,頂端に柄状の長い有毛のくちばしがある。

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世界大百科事典内のストロファンツスの言及

【強心薬】より

…心筋に直接作用する強心薬には次のようなものがある。
[強心ステロイド]
 ゴマノハグサ科の植物であるジギタリスの葉,キョウチクトウ科の植物ストロファンツスの種子,ユリ科の植物カイソウ(海葱)Urginea maritima Bakerなどの生薬が強心作用を示すことは古くから知られていた。強心薬としてのジギタリス葉はすでに17世紀のロンドン薬局方に記載されていたといわれ,ストロファンッスは1860年のリビングストンのアフリカ探検で紹介された。…

【心臓薬】より


[強心薬]
 種々の原因で心臓の機能が低下している場合に,心筋の収縮力を高める目的で用いる。代表的なものは,ゴマノハグサ科の植物ジギタリスの葉,キョウチクトウ科の植物ストロファンツスの種子,ユリ科の植物カイソウ(海葱)などの生薬,およびこれらの有効成分である強心配糖体である。いずれもステロイド骨格を有する配糖体で強心ステロイドとも呼ばれる。…

【有毒植物】より

…しかし用量安全域がせまく,副作用として食欲不振,悪心,嘔吐をさそい,多量に使用すれば心臓停止による死を招く。キンポウゲ科のフクジュソウ,クリスマスローズ,キョウチクトウ科のキョウチクトウ,ストロファンツス,ユリ科のオモト,カイソウ,スズランなどにも同様の成分が存在する。ストロファンツスはアフリカの原住民によって,矢毒として利用されていた。…

※「ストロファンツス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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