消費者に、商品広告だと気づかれないように宣伝をすること。ステルスとは英語で「隠密、こそこそしたやり方」の意味。露天商などが使った「さくら」や「やらせ」と同じ行為で、業者と通謀して客になりすました人が商品をほめるなどして、買い物客の購買心をそそる行為である。略称ステマ。アンダーカバーマーケティングundercover marketingともよばれる。
一般的な雑誌でも一種のステルスマーケティングといえるような内容の記事があることは否定できないが、とくにインターネットの場合には、ブログが利用されることが目だっている。これは定期的に閲覧する多数の読者をもつアルファブロガーとよばれる人に、金銭や製品などを渡し、商品や店の情報をブログに掲載させるというものである。インターネットの場合、特定の商品を高く評価するだけでなく、競合商品や競争相手の企業の悪い印象を流布するという悪質なケースもみられる。
アメリカでは連邦取引委員会が、「広告における推奨および証言の利用に関する指導」(Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising)を2009年に改訂した。消費者自らがインターネット上で直接行う宣伝行為に対し、一定の制限を加えたもので、製品やサービスを評価した消費者と広告関係者の間に特別な関係や金銭の授受があるときの開示を義務づけている。日本の消費者庁では、口コミサイトやブログで第三者になりすまし、消費者に誤解を与える投稿がなされるケースに対応し、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」というガイドラインを2011年(平成23)10月に公表した。その後、2012年1月に、一般利用客の評価を採点によって示す口コミグルメサイト「食べログ」で、評価の順位を意図的に上げるランキング操作の事例があることが判明。飲食店から金銭を受け取り、その店の順位を上げる「やらせ業者(口コミ代行業者)」の存在が明らかになった。同庁は2012年5月、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部を改訂し、口コミ代行業者を使い、一般消費者に誤解させる表示をすることを、問題となる事例として追加した。
[編集部]
(横田一輝 ICTディレクター / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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