スダチ(読み)すだち

改訂新版 世界大百科事典 「スダチ」の意味・わかりやすい解説

スダチ (酢橘)
Citrus sudachi hort.ex Tanaka

徳島県特産の酢ミカン。夏~秋に緑色果を収穫し,果汁と香りを調味に用いる。ユズ近縁種として300年以上前に阿波で作出され同地を中心に広まった。古くから栽培されていたが,一般に知られ,増産され始めたのは昭和40年代である。生長は遅いが高さ5~6mの木になる。耐寒性があり,病虫害にも比較的強い。新芽は紫褐色,つぼみ淡紫色をおびる。花は5月に咲き,白色5弁で花序は形成しない。果実は扁球形で30~40g。熟すと橙黄色になるが,若い緑色果の方が風味がよい。果皮は薄く苦みはない。果肉多汁で,酸を6~7%(おもにクエン酸),糖を2%ほど含む。幼果はすりおろし,そうめんやそばの薬味に,緑果の果汁は刺身,焼魚,なべ物などに搾りかける。マツタケ料理によく使われ,食酢にもなる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スダチ」の意味・わかりやすい解説

スダチ
すだち / 酢橘
[学] Citrus sudachi hort. ex Shirai

ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑低木ないし中高木。ユズの近縁種。徳島県の特産。同県下では江戸時代後半から栽培され、樹齢200年を超す古木もある。果実は扁(へん)球形で30~40グラム、10月下旬に熟す。熟果は橙黄(とうこう)色を呈し、苦味はなく、瓤嚢(じょうのう)(袋)数は9~10個、果肉は淡黄色。果皮は滑らかで、小さな油点が多い。種子のある系統とない系統とがあり、種子のあるものは12個内外の種子をもち、種子は多胚(はい)で、胚は白い。果皮にはスダチチン、デメトキシスダチチンなどを含む。果汁は多く酸味が強いが、多種類の酸性アミノ酸を含むために特有の風味と芳香があり、酢として珍重される。季節感のある果物の一つとして風味を尊び、緑果のうちに利用され、焼きマツタケやシイタケなどにはふさわしく、焼き魚、煮物、刺身、吸い物、湯豆腐など和食にあう。ブランデーや紅茶などにも調和する。8月末から10月にかけて出荷が多い。全国の生産量のおよそ98%を徳島県で生産している。

[飯塚宗夫 2020年10月16日]


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百科事典マイペディア 「スダチ」の意味・わかりやすい解説

スダチ

徳島県に多く産する小柑橘(かんきつ)。茎は束生し,高さ5〜6mになり,枝にとげのあるものと欠くものとがある。葉は小型で,つぼみは淡紫色,開花直前に白色になる。果実はだいだい黄色。球形で重さ30g内外,皮はうすくむきにくい。果肉は柔らかく,多汁で酸味が強いがかおりが高く,料理に利用される。

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栄養・生化学辞典 「スダチ」の解説

スダチ

 [Citrus sudachi].ムクロジ目ミカン科ミカン属(柑橘類)の一つで,香りづけに使う.

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