スタイケン(英語表記)Edward Steichen

デジタル大辞泉 「スタイケン」の意味・読み・例文・類語

スタイケン(Edward Jean Steichen)

[1879~1973]米国の写真家ルクセンブルク生まれ。印象派的写真から出発し、第二次大戦後はファッション写真を多く手がけた。ニューヨーク近代美術館の写真部長となり、ヒューマニズムテーマとした「人間家族」展を企画、世界的反響を呼んだ。

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改訂新版 世界大百科事典 「スタイケン」の意味・わかりやすい解説

スタイケン
Edward Steichen
生没年:1879-1973

アメリカの写真家。ルクセンブルク生れだが,1880年に両親とともにアメリカに移民している。スタイケンは幼いころから絵画に興味を持ち,写真を撮るようになったきっかけも,版画のモティーフの資料としてであった。彼は写真に,役に立つものと芸術的なものとを同時に見,それが写真への深い興味となり,生涯にわたる写真へのかかわり方の原点となった。第1次世界大戦までのスタイケンは,A.スティーグリッツらとともに〈フォトセセッション(写真分離派)〉の設立メンバーとして活躍,写真芸術の推進者として彫刻家ロダンをその彫刻と組み合わせて撮ったポートレート(1902)など,数々の絵画的な写真の名作を残した。第1次世界大戦中にはアメリカ空軍の航空写真班として従軍,その体験は写真のもつ機能というものにさらに眼を開かせることとなった。のち《ボーグ》《バニティ・フェア》を出版していたコンデ・ナスト社の写真部長に就任,数多くのファッション写真を撮り,斬新なスタイルを打ち出して活躍した。第2次世界大戦後はニューヨーク近代美術館の写真部長に就任,1954年には,世界各国の一流の写真家の作品を集めて,人類の幸福と不幸を壮大な規模で示す一大写真展〈ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)〉をディレクトした。独特のヒューマニズムに満ち,多くの人々に感動をもって迎えられたこの写真展は,彼の写真の思想を集大成したものである。同写真展は日本でも56年に公開された。ほかに写真集として《生涯と写真A Life in Photography》(1963)がある。
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百科事典マイペディア 「スタイケン」の意味・わかりやすい解説

スタイケン

写真家,画家。ルクセンブルク生れ。1881年米国に移住。画家を志したが,のちにグラフィック・デザイン,写真の道に進む。米国の写真を新しい方向に導いた指導者であったスティーグリッツと1900年に出会い,多大な影響を受ける。1902年スティーグリッツによって組織された〈フォト・セセッション〉の創立会員となり,その芸術運動に参加。マティスピカソブランクーシなどヨーロッパの同時代の芸術家の仕事をニューヨークのギャラリーで紹介した。初期の作品には,プラチナ,カーボン,カロタイプなどの技法による絵画的な色彩の濃いものであったが,第1次大戦後は1923年から《ボーグ》誌の写真家として,シャープな画面のファッション写真を撮影。1947年,ニューヨーク近代美術館写真部門のディレクターに就任し,1955年に《ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)》展を企画・開催した。
→関連項目ファン・デル・エルスケン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スタイケン」の意味・わかりやすい解説

スタイケン
Steichen, Edward

[生]1879.3.27. ルクセンブルク,ルクセンブルク
[没]1973.3.25. アメリカ合衆国,コネティカット,ウェストレディング
ルクセンブルク生まれのアメリカ合衆国の写真家。フルネーム Eduard Jean Steichen。1898年フィラデルフィア写真展に出品し,1900年ロンドンで開かれた新進アメリカ写真展に入選。1902年アルフレッド・スティーグリッツのフォト・セセッション(写真分離派)に参加,以後アメリカの著名な人物の肖像写真を撮って写真家としての地位を確立した。1923年コンデナストの写真部長に就任,ファッション写真に新風を吹き込んだ。第2次世界大戦中は海軍写真部長,1947年ニューヨーク近代美術館 MoMA写真部長に就任。1955年同館において写真展『ザ・ファミリー・オブ・マン』を主催し,世界各国から集めた 200万枚の写真から 503枚を選んで展示,全世界から絶賛を受けた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタイケン」の意味・わかりやすい解説

スタイケン
すたいけん
Edward Jean Steichen
(1879―1973)

アメリカの写真家。ルクセンブルクに生まれ、のちアメリカに帰化する。印刷会社の下絵工から身をおこし、写真は独学で習得した。フィラデルフィアのサロン出品(1899)を機に、スティーグリッツに認められる。1923年には雑誌『ボーグ』や『バニティー・フェア』などの出版社で主任写真家となり、ファッションやハリウッドのスターの写真を多く手がけるようになる。第二次世界大戦中は空軍で戦略写真の技術指導にあたり、戦後は47年にニューヨーク近代美術館に迎えられ、写真部門の初代学芸部長を務めた。54年、彼の企画でヒューマニズムをテーマとした大写真展「ザ・ファミリー・オブ・マン」が開催され、世界各国に巡回されて大きな反響をよんだ。

[平木 収]

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