スウェーデンボリ(英語表記)Emanuel Swedenborg

デジタル大辞泉 「スウェーデンボリ」の意味・読み・例文・類語

スウェーデンボリ(Emanuel Swedenborg)

[1688~1772]スウェーデンの神秘思想家。科学者であったが、霊的覚醒を受けて心霊研究没頭し、新宗教創設。著「天界地獄」「神智と神愛」など。スウェーデンボルグ

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改訂新版 世界大百科事典 「スウェーデンボリ」の意味・わかりやすい解説

スウェーデンボリ
Emanuel Swedenborg
生没年:1688-1772

スウェーデンの自然科学者,哲学者,宗教家。ストックホルムに生まれ,自然科学を学んだが,理論ばかりでなくその応用としての工学に関心を抱く。1747年まで鉱山局に勤めるかたわら,自然科学者として一流の業績を残した。自然の根本を探求する中で,科学の経験的認識の限界を超えたさまざまなビジョンを見はじめ,1745年に,聖書の霊的な意味を霊の世界との交流の体験に基づいて明らかにするという使命を自覚,宗教家としての後半生がはじまる。神的・霊的世界と人間と自然の〈照応〉,この3者の〈生命〉としての連続,〈神の似姿〉〈ミクロコスモス〉としての人間などの考えはベーメヘルモントらにも共通している。霊や天使の体験に基づき天国と地獄,死後の世界について語り,啓蒙主義のヨーロッパに衝撃を与え,カントの関心もひいた。イギリスやフランスでは多くの信奉者が〈新しい教会〉の形成を求めて集まり,W.ブレークバルザックなどにも影響を与えた。日本には鈴木大拙が紹介し,《天界と地獄》(1758)など多数の著書は日本語にも訳されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スウェーデンボリ」の意味・わかりやすい解説

スウェーデンボリ
Swedenborg, Emanuel

[生]1688.1.29. ストックホルム
[没]1772.3.29. ロンドン
スウェーデンの科学者,哲学者,神学者。初め自然科学を研究したが,55歳のとき,神の啓示を受けて科学的方法の限界を悟り,神霊者,神秘的神学者として活躍した。哲学的には,無限者を全被造物のうちなる不可分の力と生命とみなし,この無限者を神とした。また本性と位格における神の絶対的統一を主張し,三位一体を,唯一の神格における愛と知恵と活動性の統一と解することで,父と子と聖霊という3つの位格の統一としての伝統的教理を否定した。死後,1787年にロンドンで彼の教理に従う「新エルサレム教会」が設立され,また 1810年には「スウェーデンボリ協会」が設立された。最も有名な著作に『天界と地獄』 De coelo et ejus mirabilibus,et de inferno (1758) がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スウェーデンボリ」の意味・わかりやすい解説

スウェーデンボリ
すうぇーでんぼり
Emanuel Swedenborg
(1688―1772)

スウェーデンボルクともいう。スウェーデンの神秘家。言語学、数学、自然科学を学び、鉱山官となる。優れた自然研究家で、大脳作用の意義を初めて明らかにした。心身問題を探究していたが宗教的危機に陥り、幻をみ、科学的方法が全実在を解明しえないことを悟る。栄職を捨て(1747)、視霊者として聖書の霊的研究に没頭。霊魂の独立存在、死後存続を信じ、自ら天使や諸霊と語り、天界と地界の対応を踏まえて、霊界などについて詳しく記述した。彼の教えはキリスト教の伝統的教説と異なる点が多い。その影響はゲーテなどにみられる。カントの『視霊者の夢』(1766)は彼への批判である。

[常葉謙二 2015年11月17日]

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百科事典マイペディア 「スウェーデンボリ」の意味・わかりやすい解説

スウェーデンボリ

スウェーデンの神秘思想家,自然科学者。初め工学,鉱山学の研究に専念したが,1745年以降,霊的世界との交流を通じて聖書の秘義を明らかにするという使命に目覚め,《天界と地獄》(1758年)ほかの著作で,啓蒙期のヨーロッパ思想界に衝撃を与えた。カント,ブレーク,バルザックらへの影響はよく知られ,その思想を受け継ぐ〈新エルサレム教会〉は今日まで存続する。
→関連項目ラーファター

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世界大百科事典(旧版)内のスウェーデンボリの言及

【幻視】より

…またジャンヌ・ダルクの得た幻視は有名である。この伝統はやがて,ある日突然神の啓示を受けて宗教的思索活動に身を投じたベーメや天使・精霊と対話できたと伝えられるスウェーデンボリらに受け継がれた。一方,芸術家たちも創作上の霊感を得るために幻視体験や瞑想修業を重視し,W.ブレークは〈幻視とは洗い清められた感覚で自然を見ることにほかならない〉として,詩作や絵画制作そのものを幻視体験と同一視した。…

※「スウェーデンボリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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