ジュネーブ議定書(読み)ジュネーブぎていしょ

精選版 日本国語大辞典 「ジュネーブ議定書」の意味・読み・例文・類語

ジュネーブ‐ぎていしょ【ジュネーブ議定書】

[一] 一九二二年一〇月、イギリスフランスイタリアチェコスロバキアオーストリアの間に結ばれたオーストリアの経済援助条約議定書
[二] 一九二四年一〇月、国際連盟第五回総会で採択された条約。正式名は国際紛争平和的処理議定書。国際紛争の平和的解決のための保障協定。国際紛争の平和的処理、安全保障、軍備縮小を規定。イギリスの反対で未発効
[三] 一九二五年六月の毒ガス細菌使用禁止についての国際協定。二八年二月発効。アメリカ、日本などは批准しなかった。
[四] 一九二八年九月の「国際紛争平和的処理に関する一般議定書」。二九年八月発効、四九年四月改正。日本は加入していない。
[五] 一九五八年四月の紛争の義務的解決に関する選択署名議定書。海洋法に関する紛争についてのもの。

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百科事典マイペディア 「ジュネーブ議定書」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ議定書【ジュネーブぎていしょ】

(1)1924年フランスが国際連盟総会に提出した,国際間の紛争の平和的解決のための保障協定で,自衛以外の武力行使を禁じたもの。国際連盟総会では承認されたが,英国など各国が批准しなかったために発効しなかった。(2)戦争に際して毒ガス・細菌等の使用禁止を規定した1925年調印の国際協定。40ヵ国が参加し,日本は1982年批准した。(3)1928年国際連盟で採択された国際紛争平和的処理に関する一般議定書。単に一般議定書とも。加盟国間の国際紛争に当たっては常設調停委員会を設けてここに付託されることとし,国家間の法律的紛争は当事者の合意があれば常設国際司法裁判所に付託しなければならないと規定した。1949年国際連合憲章によって一部字句の修正がなされた。→国際司法裁判所
→関連項目細菌兵器生物兵器

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュネーブ議定書」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ議定書
じゅねーぶぎていしょ
Geneva Protocol 英語
Protocole de Genève フランス語

正式名称は国際紛争平和的処理議定書Protocol for the Pacific Settlement of International Disputes(英語)/Protocole pour le réglement pacifique des différends internationaux(フランス語)である。1924年10月2日に国際連盟第5回総会で採決され、前文および21か条からなる。仲裁裁判、安全保障、軍備縮小の3原則によって国際紛争を平和的に解決し、国際連盟の欠陥を補完する目的で作成され、前文では侵略戦争は国際犯罪と規定されている。同議定書は、とくに、あらゆる国際紛争に拘束力ある裁決を下し、解決に導くことを取り決めている。すなわち、常設国際司法裁判所規程第36条2項が規定する紛争の義務的管轄を締約国が承認し、それ以外の紛争は最終的に国際連盟理事会による審査、あるいは仲裁裁判によって解決される。ここに定められた紛争解決手続に付すことを拒否し、また理事会の勧告、裁判判決に反して戦争に訴えた国は、侵略国と認定され、制裁が実施されることになっていた。さらに、議定書の発効は、軍縮計画の採択・実効に従属していた。同議定書には、フランスなど19か国が署名したが、イギリスが1925年3月の連盟第33回理事会で正式に不加入を表明したことが影響し、必要な数の批准が得られず未発効に終わった。フランスを中心とする連盟の安全保障強化のための方策は、相互援助条約案(1923)に続いて挫折(ざせつ)し、この原因となったイギリスは、以後、ロカルノ条約(1925)に結実されるラインラントの安全保障条約案の具体化に乗り出すことになる。

[植田隆子]

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改訂新版 世界大百科事典 「ジュネーブ議定書」の意味・わかりやすい解説

ジュネーブ議定書 (ジュネーブぎていしょ)
Geneva Protocol

1925年の毒ガス等の使用禁止に関する議定書がこの名称で呼ばれることもあるが,一般には1924年の〈国際紛争平和的処理議定書〉を指す。この議定書は,国際連盟規約を補完するため,1924年10月2日国際連盟第5総会で採択された。その本文は,国際連盟規約より進んだ戦争の一般的禁止を定めたほか,常設国際司法裁判所の義務的管轄を認めるなど,すべての紛争を最終的に連盟理事会等の決定により平和的に解決する体制を確立した。さらに,その締約国は25年に開催される予定の軍備削減のための国際会議に参加することを約束する,とした。なおこの議定書前文は,侵略戦争を国際犯罪を構成するものとして宣言したことで有名である。この議定書は19ヵ国の署名を得たが,作成に中心的役割を果たしたイギリスが政権交替により批准しない態度を示したことなどの理由によって,結局効力を発生するには至らなかった。
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世界大百科事典(旧版)内のジュネーブ議定書の言及

【化学兵器】より

…以後,交戦国が競争して化学兵器を開発し惨害をもたらした。戦後,大量殺戮兵器の使用を禁止する1925年のジュネーブ議定書が調印されたが,列強国はその後も化学兵器の生産を続けた。第2次大戦中,ドイツはタブン,サリンを開発したが使用しなかった。…

【戦争】より

…この戦争制限は,連盟規約では手続上の問題としてとりあげられた。 1924年ジュネーブ議定書(正式には〈国際紛争平和的処理議定書〉)は,国際紛争解決のために戦争に訴えることはもはや許されないとして,侵略戦争一般を禁止したが,諸国の批准が得られず成立しなかった。一定の範疇の戦争そのものを禁止したのは28年の不戦条約(正式名称は〈戦争放棄に関する条約〉)である。…

※「ジュネーブ議定書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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