ジャコウネズミ(読み)じゃこうねずみ(英語表記)musk shrew

改訂新版 世界大百科事典 「ジャコウネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジャコウネズミ (麝香鼠)
musk shrew
Suncus murinus

食虫目トガリネズミ科の小哺乳類。とがった吻(ふん)をもち,体型はジネズミに似るが,トガリネズミ科の動物としてはもっとも大型で,体つきはがっしりしている。耳は大きくほとんど毛が生えていない。尾にはまばらに毛が生えるのみ。体色は淡い茶色。体長11~15cm,尾長6.5~8cm,体重80g前後。エジプトタンザニアアラビアインド東南アジア,中国,ニューギニアなどに広く分布し,野生型と,イエネズミのように人の住居やその周辺で生活する家住型とがある。沖縄,奄美大島,九州の長崎鹿児島県の一部の地方にすむ日本のものは,古く(たぶん江戸時代)船で運ばれてきた帰化動物で,家住型である。ゴキブリをはじめとする昆虫ミミズなどの無脊椎動物をおもに食べるが,雑食性の傾向があり,残飯家畜の餌を食べたり,ニワトリの雛を襲うこともあってきらわれる。雄には体側腺が発達し,強い麝香臭を発する。おそらくこれは雌を誘引する効果をもつものと思われるが,甲高く鋭い鳴声とともに人にきらわれる一因となっている。夜行性。雌は妊娠期間30日で,1産2~8子を年に数回生む。母親と子が巣を出て移動する際には,順に尾の付け根をくわえて一列に連なって歩く特異な習性がある。実験動物として家畜化されている。飼育下での寿命は,1.5~2.5年。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャコウネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジャコウネズミ
じゃこうねずみ / 麝香鼠
musk shrew
[学] Suncus murinus

哺乳(ほにゅう)綱食虫目トガリネズミ科の動物。沖縄諸島、台湾、中国南東部、インドシナ半島、インドなど東洋区に広く分布し、船舶などによりグアム島、マダガスカル島のほか日本では古くから長崎や鹿児島などに渡来したものが定着している。頭胴長11~16センチメートル、尾長6~8センチメートル。ジネズミを大形にした体形である。耳介が大きく、尾は基部が太く、先細りとなり、まばらな長毛をもつ。雄の成体の尾はとくに太い。体側に楕円(だえん)形の臭腺(しゅうせん)をもち、雄の成体のそれはとくに大きく、強い臭気を出す。毛は柔らかくて短く、背面は灰褐色、下面は灰色。歯式は

で合計30本、東南アジアでは低地の森林、農耕地周辺、人家内などにすむが、九州のものは住家性である。夜行性で、床下排水溝、石垣、やぶなどで昆虫、クモ、ミミズ、ヒル、カエルなどを食べる。約30日の妊娠期間ののち、通常2~6頭の子を産む。

[阿部 永]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャコウネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジャコウネズミ
Suncus murinus; musk shrew

食虫目トガリネズミ科。体長 12.5cm,尾長 8cm内外。体の上面は蒼灰色,下面は淡色。口吻が突き出ている。体には短毛が密生する。尾は基部が太く先細で,細長い毛がまばらに生える。人家や人家付近に多い住家型と,おもに森林にすむ野生型とがある。体側の臭腺から悪臭を発する。おもに昆虫類,ミミズ,カエル,ヘビ,ネズミなどを食べるが,樹根などの植物質も食べる。夜行性。北アフリカ,東洋区に産し,日本では移入されたものが沖縄,九州南部を中心に分布している。

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百科事典マイペディア 「ジャコウネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジャコウネズミ

食虫目トガリネズミ科の哺乳(ほにゅう)類。形はジネズミに似るが大きく,雄は体長11.5〜13.3cm,雌は10.5〜12cm,尾6.5〜9cmほど。短毛を密生し,背面は灰褐色。インド,東南アジアなどに広く分布し,日本では南西諸島,長崎,鹿児島などにすむ。人家内やその付近にひそみ,夜出て昆虫,ミミズ,野菜などを食べる。体側にある腺から強い麝香(じゃこう)臭を放つ。

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