ジムグリ(読み)じむぐり

改訂新版 世界大百科事典 「ジムグリ」の意味・わかりやすい解説

ジムグリ (地潜)
Elaphe conspicillata

森林性のおとなしいナミヘビ科の無毒ヘビ。全長80~120cm。北海道本州四国九州および離島に分布。体鱗に弱い隆条があるが全体に滑らかで光沢がある。体背面は赤褐色または黄褐色,腹面は橙がかった赤色で,黒色市松模様が並ぶが,個体により色彩濃淡斑紋の形に変異がある。子ヘビの背面は赤みが強く,黄色く縁取られた黒色小斑紋が多数散在するが,成長とともに斑紋が目だたなくなり,まったく無斑の個体もある。山地の森林に生息し,もっぱらネズミ類,食虫類など小哺乳類を捕食する。そのため地中のこれらの巣穴などによく潜り込む。ジムグリは農林業に被害を与えるネズミ類を捕食する有益動物であるが,森林の小哺乳類にとっては手ごわい天敵となっている。性質はきわめておとなしい。7~8月ころ,一度に4個前後を産卵する。北海道,本州の山地に分布するアカジムグリE.japonicaは個体数が少ない。
ヘビ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジムグリ」の意味・わかりやすい解説

ジムグリ
じむぐり
[学] Elaphe conspicillata

爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目ナミヘビ科のヘビ。ネズミ類を捕食する有用な無毒種で、俗称をゲンロクヘビ(元禄蛇(げんろくへび))という。北海道、本州、四国、九州および大隅諸島などの離島に分布する。全長80~120センチメートル、頭部はやや細長く吻(ふん)部が長くて丸みを帯びる。体鱗には弱い隆条があるが、滑らかで光沢がある。体背面は赤褐色または黄褐色で、青く縁どりされた黒色の小斑点(はんてん)が散在する。幼体では背面の赤みが強く、黄色く縁どりされた多数の黒斑または黒色横帯があるが、成長とともに薄れる。腹面は橙(だいだい)がかった赤色で市松模様の黒斑が並び、本種の特徴となっている。山地の森林にすみ、名のとおり動物の巣穴に潜って、もっぱらネズミ類、食虫類などの小哺乳(ほにゅう)類を捕食する。人間にとっては、農林業に大きな被害を与える害獣を捕食する有用なヘビとなり、森林の小哺乳類には手ごわい天敵となっている。性質はきわめておとなしい。本州の高地に産するアカジムグリE. japonica別種とされる。

[松井孝爾]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジムグリ」の意味・わかりやすい解説

ジムグリ
Elaphe conspicillata

トカゲ目ナミヘビ科。体長 80cmに達する。背面は灰褐色で,頭に八字状の黒色斑がある。腹面は黄色で,腹鱗の両側端に明瞭な黒色斑があり,市松模様を表わしている。幼体は背面赤紅色で黒色の横斑があり,成体とは別種のようにみえる。日本固有種で,北海道,本州,四国,九州に分布し,おもにネズミ類を食べる。

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百科事典マイペディア 「ジムグリ」の意味・わかりやすい解説

ジムグリ

ナミヘビ科の無毒ヘビ。全長1m前後。日本の固有種で,全国に分布する。体背面は赤褐〜黄褐色,腹面は淡黄色で小さい黒斑が散在し,幼体の背面の地色は赤色。標高2000mの高山帯にまで分布し,もっぱら森林や耕地のノネズミ類を捕らえるので有益。

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