ジオウ(読み)じおう

改訂新版 世界大百科事典 「ジオウ」の意味・わかりやすい解説

ジオウ (地黄)
Rehmannia glutinosa(Gaertn.)Libosch.

中国原産で薬用に栽培されるゴマノハグサ科多年草。全体に白色腺毛がある。根は黄白色で肥厚し,長く地中をはう。葉は根ぎわに集まってつき,倒卵状披針形,長さ3~13cm,幅2~6cm,縁に先の鈍い大型の鋸歯がある。春,葉の間から高さ10~30cmの花茎を伸ばす。花は紅紫色の筒形で先は5裂して唇形をなし,長さ約4cm,密に軟毛が生える。蒴果(さくか)は卵形で長さ1~1.5cm,多数の小さな種子がある。花の黄白色の品種をシロヤジオウといい,根が塊状に肥大する品種をカイケイジオウという。

 ジオウ属Rehmanniaは中国中部・北部,朝鮮に分布し,約7種知られる。日本で花を観賞用に栽培されるものに,センリゴマ(一名ハナジオウ)R.japonica Makinoがある。ジオウに似るが,花茎に大型の葉がつき,花は大きく長さ5~6cmある。自生地は知られていない。
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生薬ではジオウの根を乾燥したものを日本で乾地黄(かんじおう),中国で生地黄(しようじおう),蒸して乾燥したものを熟地黄(じゆくじおう)という。ステロイドマンニトール,イリドイド配糖体などを含む。熟地黄は補血強壮剤で,他の生薬と配合して貧血の治療,吐血,喀血(かつけつ),鼻血,産後の出血過多の止血,婦人科疾患,そのほか急性腎炎,各種心臓疾患などに,また乾地黄は他の生薬と配合して高熱の口渇,気管支炎,はれものなどの解毒および泌尿器系炎症,止血などに用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジオウ」の意味・わかりやすい解説

ジオウ
じおう / 地黄
[学] Rehmannia glutinosa (Gaertn.) Libosch.

ゴマノハグサ科(APG分類:ハマウツボ科)の多年草。アカヤジオウ(赤矢地黄)、サオヒメともいい、中国の東北、華北華東、華中、内モンゴルに分布する。乾燥した砂礫(されき)地、傾斜地、路辺の荒れ地などに野生するが、栽培もされている。江戸時代には奈良地方で盛んに栽培されていたが現在はほとんどみることはない。植物体は高さ10~30センチメートルで全体に灰白色の長毛と腺毛(せんもう)を密生する。根茎は赤褐色で、初めは下向きに伸びるが、その後、横に長く走る。栽培したものの根茎は肥大する。葉は根際に多数生え、長楕円(ちょうだえん)形で長さ3~10センチメートル、幅1.5~4センチメートル。縁には不ぞろいで粗い鋸歯(きょし)があり、基部はしだいに狭くなって長い葉柄に延下する。表面はしわが多い。初夏に花茎を単出し、上部に数枚の小さい葉を互生し、その葉腋(ようえき)から長い柄をもつ淡紅紫色で長さ3~4センチメートルの大きな花を1個ずつつける。萼(がく)は鐘形で先は5裂し、花冠は筒部が長く、先端で開出し5裂となる。裂片は鈍円形である。雄しべは4本で筒部の下部につき、うち2本は長い。雌しべは1本で子房上位につく。蒴果(さくか)は円形ないし卵円形で先端がとがり、多数の種子をもつ。花冠が淡黄色のものをシロヤジオウ(白矢地黄)という。

 中国の河南省北部で栽培している栽培品種は高さ40センチメートルに達し、根茎が著しく肥大するので、とくに懐慶(かいけい)地黄とよばれ、品質のよいことで知られている。漢方では、9~10月に掘り取った根茎を水洗いして使用するものを鮮(せん)地黄といい、乾燥したものを生(しょう)地黄または乾(かん)地黄といい、黄酒(ホワンチウ)(中国の醸造酒)を加えて蒸し、黒色になったときに取り出して乾燥したものを熟(じゅく)地黄という。薬用では補血、強壮、止血、解熱、消腫(しょうしゅ)剤として、貧血、子宮出血、月経不調、腰痛、糖尿病、打ち身、腫(は)れ物などの治療に用いる。

[長沢元夫 2021年9月17日]

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百科事典マイペディア 「ジオウ」の意味・わかりやすい解説

ジオウ

地黄。中国原産で,薬用として栽培されるゴマノハグサ科の多年草。高さ10〜30cm,全草に白色の腺毛がある。根は肥厚し,倒披針形の根出葉がロゼット状につき,初夏,筒状唇形(しんけい)で淡紅紫色の花を総状につける。アカヤジオウ,カイケイジオウなどがあり,根を補血,強壮,解熱剤などに用いる。

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デジタル大辞泉プラス 「ジオウ」の解説

ジオウ

ゴマノハグサ科アカヤジオウなどの根茎。補血、滋養などの作用があり生薬として使用される。表記は「地黄」とも。

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