シロウオ(読み)しろうお(英語表記)ice goby

改訂新版 世界大百科事典 「シロウオ」の意味・わかりやすい解説

シロウオ (素魚)
ice goby
Leucopsarion petersi

スズキ目ハゼ科の沿岸魚。温帯性で青森以南の各地に分布する。体は細長くうろこがない。生きているときには透明な淡黄色であるが,死ぬと白色になり,名前も似ているところからシラウオ(サケ目シラウオ科)とまちがえられるが,体がやや円筒形を帯びており,1匹ずつよく見れば形態も明らかに異なる。雄は雌より胸びれが大きく,雌には腹側に小黒点が並ぶ。岸近くの砂中,または砂泥地に生息し,底層のみにとどまらず中層をも遊泳する。産卵期は2~5月で,小石のある川にのぼり産卵する。石の下に指先が入るほどの隙間をつくり石の下面に卵を付着させる。体内にあるときの卵は丸くて内外2層の卵膜からなるが,水中に産みだされると外膜が翻転し1束の付着糸となる。さらに,卵は吸水しナガナス状(約3mm×0.7mm)になる。1尾で300~600粒の卵をもつ。生時はシラウオより美味だが死ぬと急速に味が落ちる。福岡市室見川の〈シロウオのおどり食い〉が有名。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シロウオ」の意味・わかりやすい解説

シロウオ
しろうお / 素魚
ice goby
[学] Leucopsarion petersi

硬骨魚綱スズキ目ハゼ科に属する魚。体はやや側扁(そくへん)して細長く、半透明の体壁を通して体腔(たいこう)内にうきぶくろがみえる。腹びれ左右合しているが、ごく小さい。鱗(うろこ)はない。雌は雄より大きくなり、黒色素胞がより多い。全身5センチメートル前後。北海道南部から奄美(あまみ)大島までの日本各地、朝鮮半島、中国に産する。内湾の下層部で群泳し、浮遊性の橈脚(とうきゃく)類を主食としている。産卵期の春に海から川へ上ってきて、下流部で砂にうずもれた石の下面に卵塊を産み付け、雄の親魚がそれを守る習性がある。産卵後、雄は死滅するが、雌は生き残るものがあるとされている。仔魚(しぎょ)は海へ入り、そこで成長して1年後には成魚となりふたたび川に上ってきて産卵にあずかる。産卵前に群れをなして川に上ってくる成魚を四手(よつで)網、簗(やな)などでとるのがシロウオ漁であり、この漁が長く続いている地方が多い。とくに福岡市室見(むろみ)川のシロウオ漁は有名で、江戸時代から続いており、同地の春の風物詩となっている。各種のシロウオ料理(シラウオ料理とよばれる)は生きた魚を材料とする。なかでも「踊り食い」は生きたシロウオを酢じょうゆに浸して飲み込む特異な料理で、室見川の名物となっている。メバル釣りの生き餌(え)としても用いられる。

[道津喜衛]


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百科事典マイペディア 「シロウオ」の意味・わかりやすい解説

シロウオ

ハゼ科の魚。全長6cm。体は細長くやや円筒形を帯び,鱗や側線はない。淡黄色で透明。北海道の一部〜九州,朝鮮半島に分布。沿岸にすみ,春,産卵のため川を遡(さかのぼ)る。石の下面に産みつけられた卵を雄が保護する。福岡市室見(むろみ)川のシロウオ料理(おどり食い)は有名。シラウオをシロウオという地方もある。絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シロウオ」の意味・わかりやすい解説

シロウオ
Leucopsarion petersii

スズキ目ハゼ科の魚。全長 5cm。体は細長くて側扁し,やや透きとおるが,死後白色となる。頭も側扁し,下顎がわずかに突き出る。左右の腹鰭は癒合して吸盤をつくる。体に鱗がなく,また側線もない。キュウリウオ目のシラウオと混同されやすい。春に,海から川へ遡上して卵を産む。北海道から鹿児島県,朝鮮半島に分布する。

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