シュワルツ(英語表記)Schwartz, Laurent

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュワルツ」の意味・わかりやすい解説

シュワルツ
Schwartz, Laurent

[生]1915.3.5. パリ
[没]2002.7.4. パリ
フランス数学者エコール・ノルマル・シュペリュールパリ大学に学ぶ。パリで数学の博士号取得したのち,1945~52年ナンシー大学,1959~60年および 1963~83年エコール・ポリテクニクで教授を務めた。1950年,アメリカ合衆国のケンブリッジで開催された国際数学者会議で,超関数と呼ばれる関数概念の一般化の理論により,フィールズ賞を受賞した。シュワルツ以前にも,物理学者はポール・ディラックδ関数と呼ばれる密度分布を扱ってきた。δ関数は x≠0 のとき値が常に 0で,x=0 で無限大となり,数直線全体での積分値が 1になるという性質をもつ。シュワルツはコンパクトなをもつ,なめらかな関数全体の空間の双対空間の要素として,このような一般化された関数を定式化する関数解析の手法により,超関数の理論を確立した。シュワルツの超関数の理論はその後,偏微分方程式ポテンシャル論スペクトル理論などに応用された。

シュワルツ
Schwartz, Melvin

[生]1932.11.2. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2006.8.28. アイダホ,トウィンフォールズ
アメリカ合衆国の物理学者。コロンビア大学で物理学を学び,1958年博士号を取得。 1958~66年コロンビア大学の教壇に立ち,1966~83年にスタンフォード大学教授。同大学在職中の 1970年にコンピュータ・セキュリティ会社のデジタルパスウェイズを設立。 1991年ブルックヘブン国立研究所のアソシエイト・ディレクターに就任すると同時にコロンビア大学教授として復職,2000年に名誉教授。 1962年,コロンビア大学の同僚レオン・M.レーダーマン,ジャック・スタインバーガーとともに,ニュートリノの実験をしやすくする方法を考案し,この方法でミューニュートリノを発見した。この功績によって3人は,1988年ノーベル物理学賞をともに受賞した。

シュワルツ
Shvarts, Evgenii L'vovich

[生]1896.10.21. カザン
[没]1958.1.15. レニングラード
ソ連の劇作家。若い頃から演劇に興味をもち,ロストフでアマチュア劇団「演劇アトリエ」を創設,劇作家と俳優を兼ねる。 1921年劇団とともにレニングラードに移り成功を博したが,ネップ時代に解散。 24年頃から児童文学,劇作に専念した。童話や民話のモチーフを生かした幻想的,風刺的戯曲を数多く書いた。代表作『裸の王様』 Golyi korol' (1934) ,『影』 Ten' (40) ,『ドラゴン』 Drakon (44) ,映画のシナリオ『シンデレラ』 Zolushka (47) ,『ドン・キホーテ』 Don Kikhotなど。戯曲は 1960年代にモスクワの現代人劇場 (ソブレメンニク) などで再演された。

シュワルツ
Schwarz, Friedrich Heinrich Christian

[生]1776.5.30. ギーセン
[没]1837.4.3. ハイデルベルク
ドイツの神学者,教育学者。ギーセン大学神学教授の子に生れたが,聖書解釈上の意見の相違から父が職を奪われたため苦学してギーセン大学を卒業した。卒業後ルター派の牧師となり布教活動に従事。 1804年ルター教徒としては初めてのハイデルベルク大学教授に迎えられ,他界するまで神学を講じた。カント哲学から出発し,ロマン主義を経て,神秘主義の立場に立った。主著『子女教育論』 Grudriss einer Theorie der Mädchenerziehung (1792) ,『教育学』 Erziehungslehre (4巻,1801~13) 。

シュワルツ
Schwarz, Berthold

14世紀のドイツのフランシスコ会修道士。錬金術師であったといわれている。火薬発明者と伝えられているが,実際には,その普及に貢献した程度と思われる。またヨーロッパでは,初めて大砲の砲身 (青銅製) を鋳造した人物とも伝えられている。

シュワルツ
Schwartz, Maurice

[生]1890
[没]1960
ユダヤ人の俳優,演出家。 1919年ニューヨークに「ユダヤ芸術劇場」を結成,ユダヤ演劇の育成に貢献した。

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改訂新版 世界大百科事典 「シュワルツ」の意味・わかりやすい解説

シュワルツ
Hermann Amandus Schwarz
生没年:1843-1921

ドイツの数学者。L.クロネッカー,E.E.クンマー,K.ワイヤーシュトラスによって代表されるベルリン大学の興隆期と,20世紀の前半1/3世紀のドイツの数学の最盛期をつなぐ時期において,ベルリン大学の指導的立場にあった数学者である。1869年チューリヒ工科大学教授,75年ゲッティンゲン大学教授,92年ワイヤーシュトラスの後継者としてベルリン大学教授となった。彼の仕事は,ワイヤーシュトラスの思想を明確に,具体的に推進したことにあり,長年にわたるベルリン大学の講義によって,ドイツの数学界に大きな影響を与えた。主として複素変数関数論の方面で活躍,代表的な仕事は等角写像の研究であるが,とくに基本的な問題をとり上げ,具体的に問題を解決する方法を追究した。この研究から生まれた,シュワルツの鏡像の原理,シュワルツの補題は有名である。
執筆者:

シュワルツ
Evgenii L’vovich Shvarts
生没年:1896-1958

ソ連邦の劇作家。俳優出身。大人向き作品も子ども向きも,ほとんどおとぎ劇の形で書き,ソビエトの寓意劇界の第一人者であった。敬愛するアンデルセンの童話から題材を借りた場合が多いが,いずれも的確な現実認識を裏付けに,独自の作品に完成させた。鋭い政治寓意劇《裸の王様》(1934),《影》(1940),《ドラゴン》(1943)などは,今も国内だけでなくヨーロッパ諸国でたびたび上演されている。シュワルツ台本による映画では,《ドン・キホーテ》(1957,チェルカーソフ主演)が群を抜いた傑作。日本でも《影》《ドラゴン》《裸の王様》等が上演される。
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百科事典マイペディア 「シュワルツ」の意味・わかりやすい解説

シュワルツ

米国の物理学者。1958年コロンビア大学で博士号を取得,1963年同大学教授。1962年,レーダーマンシュタインバーガーらとともに,加速器実験でμニュートリノを発見し(当時は電子ニュートリノしか知られていなかった),レプトンの構造研究を発展。この業績により,1988年ノーベル物理学賞。

シュワルツ

フランスの数学者。関数解析,数理物理,超関数の理論にすぐれた業績がある。1950年フィールズ賞
→関連項目代数解析学

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