シュタイナー(英語表記)Rudolf Steiner

精選版 日本国語大辞典 「シュタイナー」の意味・読み・例文・類語

シュタイナー

[一] (Jakob Steiner ヤーコプ━) スイスの数学者。ベルリン大学教授。総合幾何学を精力的に追究し、射影幾何学代数幾何学に大きく貢献した。主著「幾何学的形象の相互依存の体系的展開」。(一七九六‐一八六三
[二] (Rudolf Steiner ルドルフ━) ドイツの哲学者、教育思想家ワイマールゲーテを研究し、自然科学的思考法と精神的直観の統合を追究。一九一三年に「人智学会」を創設し、一九年には、シュトゥットガルト子供の内的生命と自発性を尊重したバルドルフ学校を設立した。(一八六一‐一九二五

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デジタル大辞泉 「シュタイナー」の意味・読み・例文・類語

シュタイナー(Rudolf Steiner)

[1861~1925]ドイツの思想家。オーストリアの生まれ。子供の自発性を尊重したバルドルフ学校を設立し、自由主義教育の流れを受けたシュタイナー教育を提唱・実践した。

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改訂新版 世界大百科事典 「シュタイナー」の意味・わかりやすい解説

シュタイナー
Rudolf Steiner
生没年:1861-1925

ドイツの思想家。人智学創始者。クラリェベック(現在ユーゴスラビア領)に生まれ,ウィーン工科大学に学ぶ。1883年から97年,キュルシュナー国民文学叢書のために《ゲーテ自然科学著作集》全5巻を編纂する中で,ゲーテの有機体思想,とくに形態学に深い解釈を加え,新しいゲーテ研究の道を開いた。1902年神智学協会ドイツ支部設立に当たり,書記長に選ばれたが,以後新しい総合文化の必要を説き,その基礎となるべき人間観や宇宙観を,(1)霊性のヒエラルヒー,(2)輪廻転生,(3)存在界の三区分(物質界,生命界,霊界),(4)死後の世界の存在等の観点から多面的に論究した。彼は,すべての人間の中には,特定の修行を通して高次の認識を獲得する能力がまどろんでいるが,この認識の上に立てばこれらの問題を近代自然科学と同じ厳密さで探究できると主張し,この行法を《いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか》(1904-05)の中で提示する一方,《神智学》(1904)と《神秘学概論》(1909)の中で,以上の諸問題に近代的な認識批判の立場にとっても受け入れられるような表現を与えようと努めた。彼の影響は宗教,芸術,教育,医療,農法等の分野にも及んだが,とくにキリスト者共同体運動,新しい運動芸術であるオイリュトミーEurhythmie,自由ワルドルフ学校,類似療法医学,有機農法などが有名である。また個人ではシュワイツァーユング,ヘッセ,P.クレー,カロッサ,B.ワルターらにその影響が見られる。
執筆者:

シュタイナー
Jacob Steiner
生没年:1796-1863

スイスの数学者。小売商を兼ねた小農の家に生まれ,家業を手伝っていたが,18歳のときに小学教師を志望してペスタロッチの学園に入り,初めは生徒,後には教師として4年余をそこで過ごした。その後ハイデルベルク大学やベルリン大学に学び,幾何学を研究した。1834年ベルリン大学教授に就任,終生この職にとどまった。彼の最大の業績は当時フランスで新興した射影幾何学を継承して,それを総合的方法(数によらず図形そのものを直接考察する研究方法)によって発展させ,射影幾何学の基礎を築き上げたことである。そのほか,彼は初等幾何学における作図問題や最大・最小の問題に関して不滅の業績を残している。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュタイナー」の意味・わかりやすい解説

シュタイナー
Steiner, Rudolf

[生]1861.2.27. オーストリア,クラルイェビック
[没]1925.3.30. スイス,ドルナッハ
オーストリア生まれの神秘思想家,心霊主義者。1889~96年ドイツのワイマールで『ゲーテ全集』(→ゲーテ)の自然科学関係の論文編集を担当した。最初,エルンスト・ヘッケル,フリードリヒ・ニーチェの影響のもとに自由思想の立場に立ち,神秘主義に反対したが,1901年神智学 Theosophieに入り,1902年神智学会ドイツ部会の秘書となった。1912年にはみずから人智学会を設立し,人智学 Anthroposophieを創始した。1913年スイスのバーゼル近郊ドルナッハに「精神科学の学校」という位置づけのゲーテアヌムを建設(1922焼失)。またオイリュトミーと呼ばれる舞踊表現法を考案した。1919年に創設されたシュタイナー学校は人智学に基づいた教育を行ない,21世紀初頭までに世界中で 1000校をこえた。主著『自由の哲学』Die Philosophie der Freiheit(1894),『ゲーテの世界観』Goethes Weltanschauung(1897),『神智学』Theosophie(1904),"Eurythmie als sichtbare Sprache"(1927)。

シュタイナー
Steiner, Jakob

[生]1796.3.18. ベルン近郊ウーツェントールフ
[没]1863.4.1. ベルン
スイスの数学者。 19世紀の総合幾何学の創始者の一人。 14歳までほとんど教育らしいものを受けなかったが,18歳のときペスタロッチのイベルドンの学校に入り,その天性の資質が初めて芽生えた。その後苦学しながらハイデルベルク大学,ベルリン大学に通った。その後,A.クレーレの創刊した雑誌に彼の幾何学的諸発見を発表し,認められた。 1832年ケーニヒスベルク大学で学位を取得し,34年にはベルリン大学教授となり,生涯その職にあった。幾何学における解析的方法を嫌い,総合的方法を駆使して,いわゆる射影幾何学に属する多くの業績を残した。『全集』 Gesammelte Werke (2巻,1881~82) が出版されている。

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百科事典マイペディア 「シュタイナー」の意味・わかりやすい解説

シュタイナー

ドイツの神秘学者,人智学の創始者。現ユーゴスラビア領クラリェベックに生まれ,ウィーンに学んだのち,ゲーテ著作集の編纂(へんさん)に従事,とりわけその自然研究に影響を受けた。1902年神智学協会ドイツ支部書記長就任,1913年人智学協会,1923年一般人智学協会設立。霊的人間観・世界観に基礎を置き,学問・芸術・社会の変革を唱えるその思想は多様な場で実践され続けている。主著《いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか》(1904年―1905年),《神智学》(1904年),《神秘学概論》(1909年)ほか。
→関連項目池原義郎グルジェフモルゲンシュテルン

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世界大百科事典(旧版)内のシュタイナーの言及

【幾何学】より

…その基礎は,非調和比が射影的性質であることや,射影幾何学の双対性を見いだしたJ.V.ポンスレによって築かれた。これを継承して,シュタイナーJ.Steiner(1796‐1863)は二次曲線や二次曲面も射影的に扱えることを示し,A.F.メービウスやJ.プリュッカーは座標を導入して射影幾何学を解析幾何学として建設し,またシュタウトK.G.C.von Staudt(1798‐1867)はデザルグの定理を基としてそれを総合幾何学として建設した。
[非ユークリッド幾何学]
 ユークリッドがあげた5個の公準のうち,第5番目のものは〈1直線が2直線と交わり,同じ側の内角の和が2直角より小ならば,2直線は限りなく延長するとその側で交わる〉と述べられている。…

【クレレ】より

…他方,29年には《建設雑誌》をも刊行し始め,51年まで30巻を編集した。これらの雑誌に才能ある青年学者たちの寄稿を私心なく呼びかけ,N.H.アーベル,C.G.J.ヤコビ,シュタイナーJacob Steiner(1796‐1863)らの才能を世に認知させる役割を果たした。フンボルトF.W.H.A.von Humboldt(1769‐1859)と共同して,プロイセン改革期の科学振興に尽力し,ベルリン科学アカデミーほか,数多くの各国科学アカデミー会員に選出された。…

【幾何学】より

…その基礎は,非調和比が射影的性質であることや,射影幾何学の双対性を見いだしたJ.V.ポンスレによって築かれた。これを継承して,シュタイナーJ.Steiner(1796‐1863)は二次曲線や二次曲面も射影的に扱えることを示し,A.F.メービウスやJ.プリュッカーは座標を導入して射影幾何学を解析幾何学として建設し,またシュタウトK.G.C.von Staudt(1798‐1867)はデザルグの定理を基としてそれを総合幾何学として建設した。
[非ユークリッド幾何学]
 ユークリッドがあげた5個の公準のうち,第5番目のものは〈1直線が2直線と交わり,同じ側の内角の和が2直角より小ならば,2直線は限りなく延長するとその側で交わる〉と述べられている。…

【クレレ】より

…他方,29年には《建設雑誌》をも刊行し始め,51年まで30巻を編集した。これらの雑誌に才能ある青年学者たちの寄稿を私心なく呼びかけ,N.H.アーベル,C.G.J.ヤコビ,シュタイナーJacob Steiner(1796‐1863)らの才能を世に認知させる役割を果たした。フンボルトF.W.H.A.von Humboldt(1769‐1859)と共同して,プロイセン改革期の科学振興に尽力し,ベルリン科学アカデミーほか,数多くの各国科学アカデミー会員に選出された。…

【オカルティズム】より

…イギリスではW.W.ウェストコットがオカルト結社〈黄金の暁教団〉を組織し,D.フォーチュン,クローリー,S.L.M.メーザーズのような魔術師を傘下から生み出し,また詩人W.B.イェーツに霊感を与えた。一方,ブラバツキー夫人の神智学協会から分離したシュタイナーは,ドイツ・オーストリアを中心に人智学協会を創立,20世紀オカルティズムの一大潮流を形成した。イギリス・オカルティズムの一部はクローリーらのアメリカ移住以後合衆国に根づき,亡命アルメニア人の導師グルジェフの霊的行法とともに,とりわけ1960年代以降新大陸の若い世代に刺激を与え,音楽,ドラッグ文化,ヨーガ,自然食運動,タントリズムなどと習合して,新たな局面を迎えている。…

【人智学】より

…ヨーロッパ思想史の底流にある秘教的esotericな立場を表す用語として,16世紀のころから使われ(フィラレテスEugenius Philalethesの著書《アントロポソフィア・テオマギカ》1650参照),19世紀になると,人類学者トロクスラーIgnaz Paul Vital Troxler(1780‐1866)やヘルバルト派の哲学者ツィンマーマンRobert von Zimmermann(1824‐98)は一般の学術用語としても用いるようになった。しかし今日では主としてシュタイナーの提唱した立場を意味している。彼によれば,物質文明が一面的に発達し過ぎた今日こそ,秘教内容を公開する必要があるが,人智学は人類学と神智学,もしくは科学と霊界認識を仲介することでこの要求にこたえ,すべての人間の内にまどろんでいる高次の認識能力を開発して,個人の自己実現と社会の進歩のために役立つ方法を提示しようとする。…

【ムー伝説】より

…科学の分野においては,大陸移動説を提案したウェゲナーがこれを否定したが,オカルティズムの視点から超古代文明の存在を教義化しつつあった神智学者ブラバツキーが関心を示し,アメリカ西海岸の先住民族の古記録にレムリアが言及されていることを理由に,この仮想大陸はインド洋ではなく太平洋に実在したと主張した。さらに神智学協会ドイツ支部の会長であったシュタイナーは,アトランティス以前に存在した一大文明地域だったとする説を唱えた。次いでインドに駐留したイギリスの軍人チャーチワードJames Churchward(1852‐1936)が同地で古代の碑板を発見し,5万年前に高度な文明を誇ったムーと呼ばれる大陸が太平洋上にあったことを解読して,仮説であったレムリアを古代伝承に従ってムーと呼び直した。…

【ワイマール文化】より

…こうした思考は,自然への回帰,反都市,反資本という〈反近代〉の姿勢と結びつき,神智学,神秘主義の風潮とも部分的に重なっている。芸術と宗教の一体性を求めたR.シュタイナーの人智学は新たな人間学の発見であった。総じてワイマール文化は全体知を希求する人間学にとっての肥沃な土壌になっていたといえよう。…

※「シュタイナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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