シュウメイギク(読み)しゅうめいぎく

改訂新版 世界大百科事典 「シュウメイギク」の意味・わかりやすい解説

シュウメイギク (秋明菊)
Japanese anemone
Anemone hupehensis Lemoine var.japonica (Thunb.) Bowles et Stearn

庭に植えられるが,現在では野生化しているものが多く,低山の林縁などに生えるキンポウゲ科多年草。花がキクに似ており,秋に咲くので秋明菊という。また別名キブネギク貴船菊)は京都北部の貴船に多かったために名づけたらしい。高さ50~80cm,地中に匍匐(ほふく)枝を出して繁殖する。根生葉は3出複葉で,長い葉柄がある。小葉は小葉柄をもち,浅裂し,鋸歯がある。茎は直立,分枝し,節には2~3枚の茎葉を対生または輪生する。上部の茎葉は小さく,ほとんど無柄になる。秋に直径5cmくらいの花を枝の先につける。萼片は30枚くらいで,外側のものは緑色,内側のものは花弁状となり,大きく,紅紫色おしべは多数で葯は黄色。めしべはきわめて多く,軟毛があり,球状に集まる。ふつう果実はできない。

 本州・四国・九州・中国大陸に分布するが,日本のものは栽培品の野生化したものと思われる。中国大陸には5枚の萼片をもち,果実のできるもの(var.hupehensis)が自生している。似たものにA.vitifolia Ham.がヒマラヤから中国大陸西南部に分布する。葉は対生し,花弁は5枚で,白色。シュウメイギクとの間に雑種がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュウメイギク」の意味・わかりやすい解説

シュウメイギク
しゅうめいぎく / 秋明菊
[学] Anemone hupehensis L. var. japonica (Thunb.) Bowles et Stearn
Anemone japonica Sieb. et Zucc.

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。古く中国から渡来し、各地の山野に野生化している。京都の鞍馬(くらま)や貴船(きぶね)山中に多く、キブネギクの名もある。栽培品が野生化したものである。半日陰に育ち、地下茎で広がり群落となる。根出葉は3出複葉で、長い柄がある。10月ころ60センチメートルほどの花茎を出し、キクに似た径5~6センチメートルの紫紅色花を開く。弁化した萼片(がくへん)が多数あるのが普通であるが、園芸品種には一重咲きや白色花もあり、これらは新しい渡来品種といわれている。栽培には、乾きすぎない半日陰が適地で、春に子苗を株分けして植える。

[鳥居恒夫 2020年3月18日]


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百科事典マイペディア 「シュウメイギク」の意味・わかりやすい解説

シュウメイギク

中国伝来といわれるキンポウゲ科の多年草で,観賞用に栽植され,ときに野生化もする。高さ50〜80cm,3出複葉を根生および対生する。秋,茎頂に径5〜7cmのキクに似た紅紫色の花をつける。萼片はふつう30枚内外,花弁状で花弁はない。京都の貴船付近に多かったらしくキブネギクの名もある。

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