シュウカイドウ(読み)しゅうかいどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュウカイドウ」の意味・わかりやすい解説

シュウカイドウ
しゅうかいどう / 秋海棠
[学] Begonia grandis Drya.

シュウカイドウ科(APG分類:シュウカイドウ科)の多年草。中国からマレー原産の観賞用植物で、江戸初期の渡来とされる。地中の球茎が零下10℃に耐える唯一の耐寒性ベゴニアで、新茎の下端が秋末に肥大して新球茎となる。茎は直立し、高さ約50センチメートルで節が紅色をしている。葉は互生し、扁(へん)心臓形で先はとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)がある。晩夏から茎頂に集散花序をつけ、2センチメートルほどの桃色花を下垂する。雌雄異花。雄花は4弁、雌花は3弁で花の基部に三角翼のある子房をつける。秋の終わりに、葉の付け根に珠芽むかご)をつける。これが落ちて越冬するが、珠芽は耐寒力が強く、翌年発芽し、栽培がよければその年に花を開く。変種に、花色が薄く白色にみえるシロバナシュウカイドウがある。近年純白の花や大輪花、葉裏が紅紫色の品種などができている。半日陰で多湿の所でよく育ち、東洋的感覚の草花で古来文学・美術の材料となってきた。地表の被覆力と土壌水分保持と表土防失力の強いことから地表緑化の植物として用いられる。

[吉江清朗 2020年2月17日]

文化史

海棠は、カイドウ(海棠)に似た色の花を秋に咲かせるというのでつけられた漢名に基づく。陳扶揺(ちんふよう)は『秘伝花鏡』(1688)で「秋色中第一となす」とたたえた。日本への渡来を白井光太郎(みつたろう)は寛永(かんえい)18年(1641)としたが、貝原益軒正保(しょうほう)(1644~1648)のころ(『花譜』)、寛永年中(1624~1644)(『大和本草(やまとほんぞう)』)としている。いずれにしても『花壇綱目』(1681)に栽培法が出ているので、急速に広がったらしい。

[湯浅浩史 2020年2月17日]


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改訂新版 世界大百科事典 「シュウカイドウ」の意味・わかりやすい解説

シュウカイドウ (秋海棠)
two-colo(u)red begonia
Begonia grandis Dryand.(=B.evansiana Andr.)

庭園や茶庭に植栽して,可憐な風情とその花を観賞するシュウカイドウ科の耐寒性の多年草。冬季に地上部は枯死し,地下の塊茎で越冬する。原産地は中国の長江以南の各省から山東,河北省に至る地域で,日本への渡来には諸説あるが,《日本博物学年表》によれば1641年(寛永18)長崎へ入った。関東以西の暖地では湿った樹林内に野生化している。地下茎は不整の塊形となり,多くの細根を出し,毎年新旧が交替する。茎は塊茎から出て高さ40~60cmとなり,緑色の多汁質で毛はなく,節は紅色を帯びる。長い葉柄の先についた葉は互生し,ゆがんだ卵形で,先がとがり,縁に鋸歯があり,長さ8~20cm。8~9月ころ,茎頂にちかい葉腋(ようえき)から花梗を出し,その先が3~4回二叉(にさ)分岐をくり返しながら雄花を咲きすすめ,最後に数個の雌花を垂下して終わる。花は淡紅色であるが,花梗は紅い。花後,葉腋に大豆粒大の珠芽をつけ,晩秋に茎葉の枯れるころ,脱落して繁殖する。古くから変種として,花色の白いシロバナシュウカイドウvar.albaがあるほか,数種の園芸品種がある。半日陰で湿気のある場所を好む。繁殖は4~5月,塊茎か,または珠芽から育てた小苗を植える。鉢植えでは腐葉土を含んだ軽い土で植え,灌水に注意する。茎にシュウ酸を含み,食べると酸っぱい。
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