日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シャープ(Phillip A. Sharp)
しゃーぷ
Phillip A. Sharp
(1944― )
アメリカの分子生物学者。ケンタッキー州ファルマウス生まれ。ユニオン大学を卒業し、1969年イリノイ大学で化学を専攻して博士号を取得。その後、分子生物学に興味をもちカリフォルニア工科大学で電子顕微鏡を用いたデオキシリボ核酸(DNA)の解析を行う。1971年にコールド・スプリング・ハーバー研究所に移り、DNA癌(がん)ウイルスの研究を手がけた。1974年にマサチューセッツ工科大学癌研究センター準教授、1979年より同教授。1985年研究所長。1991~1999年同大学生物学部長。1999年同大学マクガバン脳研究所教授、2000年より同所長となる。
ウイルスのDNAとメッセンジャーRNA(mRNA)を結合させたものを電子顕微鏡で観察し、mRNAの生成機構を研究。DNAとmRNAを結合させると、DNAとRNA(リボ核酸)が2本鎖を形成しているところと、DNAが1本鎖の状態のままループ状になっているところがあったことから、もともとDNA上の遺伝子情報は分かれた形で存在していると考え、これを1977年に発表した。さらに、DNAの塩基配列をそのまま転写した前駆体mRNAができた後、不要な部分(イントロン)が取り除かれて、情報部分(エキソン)だけをつないだ完全なmRNAができる「スプライシング」機構を明らかにし、その後の遺伝子の発現機構解明につながった。分断遺伝子発見の功績により、R・ロバーツとともに1993年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]