シャコ(海産動物)(読み)しゃこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャコ(海産動物)」の意味・わかりやすい解説

シャコ(海産動物)
しゃこ / 蝦蛄
[学] Oratosquilla oratoria

節足動物門甲殻綱口脚(こうきゃく)目シャコ科に属する海産動物。水産業上の重要種で、とくにすし種(だね)として珍重される。北海道以南の日本各地および中国南部まで分布し、ハワイからも記録がある。水深10~30メートルの内湾砂泥底にU字形の穴を掘ってすむ。東京湾、三河(みかわ)湾、伊勢(いせ)湾、瀬戸内海有明(ありあけ)海などに多く、打瀬網(うたせあみ)で一年中漁獲されている。体長15センチメートルほどで、頭胸甲は小さくて第4胸節までしか覆っていない。露出した第5から第8胸節は腹部のようにみえるが、第6から第8胸節には歩脚が1対ずつある。後方には6腹節と尾節が続くが、第1から第5腹節の背面には4対、第6腹節には3対の縦走隆起線がある。尾節は大きく、尾肢(びし)とともに尾扇(びせん)を形成し、巣穴を掘るのに使われる。第2胸節の付属肢が変化した捕脚は、指節が鋭くとがり、内側には5、6本の鋭い棘(とげ)がある。この指節は前節の内側とあわさって特別なはさみになり、小魚、エビ、カニ、ゴカイなどを捕食する。外形的には雌雄は違わないが、雄では第8胸脚の基部内側に長い交尾器がある。

 産卵期は5月中旬から7月中旬で、6月が盛期である。卵は4万3000~5万粒で、内外2層の卵包膜で包まれている。膜を除いた卵径は0.5ミリメートルほど。各卵5~10本の糸状体が出ていて、産み出されるとすぐ直径10センチメートルで3~5層の卵塊になる。雌はこの卵塊を卵が孵化(ふか)するまで3対の顎脚(がっきゃく)で口元に抱えている。孵化直後のアリマ幼生は体長3ミリメートル内外で、三角形の甲をもつ。胸脚は前方2対だけが現れ、第2対目(後ろの捕脚)がすでに大きい。雌は孵化後満1年で体長が6、7センチメートルになり、その後、2年で8~11センチメートル、3年で12~14センチメートル、3年半で14、15センチメートルになる。寿命は雄で3年5か月、雌で3年9か月である。

 総称的にシャコとよぶ場合は口脚目に属する種を意味している。すなわち、口脚目はシャコ類である。潮間帯から深海まで約500種が記載され、6科に分けられている。

[武田正倫]

食品

形はあまりよくないが、味はたいへんよい。春から初夏が旬。なまのシャコは出回る量が少なく、水揚げした港ですぐにゆで、頭と背の殻を取り除き、腹部の皮を残して箱詰めにしたものが出荷される。すし種(だね)によく用いられる。なまのものは海水程度の食塩を加えた熱湯中でゆで、殻を除いて用いる。殻の取り方は、まず頭を取り除き、体側に沿って鋏(はさみ)で殻の両側を切り、背、尾、腹の順に殻をとる。すし種以外に酢の物てんぷら卵とじなどにする。ゆでたものは腐敗が早く、腐敗しても判別しにくいので選び方、保存に注意する。ゆでてすぐに酢じめにすると身がしまり、腐敗しにくい。

[河野友美・大滝 緑]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android