シャクジョウソウ(読み)しゃくじょうそう

改訂新版 世界大百科事典 「シャクジョウソウ」の意味・わかりやすい解説

シャクジョウソウ (錫杖草)
pinesap
Monotropa hypopithys L.

やや暗くて湿気のある林下に生えるイチヤクソウ科多年生腐生植物。全形が錫杖を思わせるところから和名がついた。全体,淡黄褐色。太い塊茎から数本の茎をだして株を作り,高さ10~20cm。葉は卵形または広披針形で長さ1~1.5cm,幅5~7mm。7月には茎の先に下垂する花を数個つける。萼片は4枚,花後じきに落ちる。花被は4枚で長さ2cm。おしべは8本。子房は4室。果実は上向きとなり,広楕円形で細かな毛が生え,乾くと4裂し,細かな多数の種子をだす。北海道から九州にみられ,北半球の温帯亜寒帯に広く分布する。

 同属のギンリョウソウモドキ(一名アキノギンリョウソウ)M.uniflora L.(英名Indian pipe)は全体白色で茎上に1個の花をつけ,ギンリョウソウに似ているが,秋咲きで蒴果(さくか)を作るので異なる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャクジョウソウ」の意味・わかりやすい解説

シャクジョウソウ
しゃくじょうそう / 錫杖草
[学] Monotropa hypopitys L.

イチヤクソウ科(APG分類:ツツジ科)の多年草。腐生植物で、全体が淡黄褐色を帯び、葉緑素はない。茎は高さ10~20センチメートルで軟毛があり、広披針(こうひしん)形の鱗片葉(りんぺんよう)を互生する。6~7月、茎上部に筒形の花を下向きに開く。萼片(がくへん)、花弁ともに5枚で内面に毛がある。果実は球形で直立する。名は全体の形を錫杖(しゃくじょう)に見立てたものである。山地帯から亜高山帯の林内に生え、日本全土、およびアジア、ヨーロッパ、北アメリカの温帯から亜寒帯に分布する。シャクジョウソウ属は子房は4~5室、胚珠(はいしゅ)は中軸胎座につき、果実は蒴果(さくか)であり、近縁のギンリョウソウ属とは子房の断面で識別できる。北半球に5種あり、日本に2種分布する。

[高橋秀男 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「シャクジョウソウ」の意味・わかりやすい解説

シャクジョウソウ

シャクジョウバナとも。イチヤクソウ科の多年生の腐生植物。北海道〜九州,東アジアに分布し,林下にはえる。茎は高さ20cm内外,直立し,肉質で淡黄褐色。葉は退化し,鱗片状となる。5〜7月,淡黄白色の花が,茎頂に数個総状に集まって下向きに咲き,果実は直立して熟する。

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