シミ(読み)しみ(英語表記)silverfish

翻訳|silverfish

改訂新版 世界大百科事典 「シミ」の意味・わかりやすい解説

シミ (衣魚/紙魚)
silverfish
firebrats
Fischchen[ドイツ]
thysanoures[フランス]

無翅亜綱シミ目(総尾類)シミ亜目Zygentomaに属する昆虫の総称有翅昆虫にもっとも近縁な原始的昆虫で,体長4~11mm。体は扁平な紡錘形で,とくに尾端に向かって細まり,体表を銀白色の鱗片が覆う。尾端の3本の尾毛がほぼ等長であることが特徴。卵からかえった幼虫は10回あまりの脱皮で成虫となり,さらに50回前後の脱皮を繰り返し4年あまり生き,昆虫としては長寿である。この間,変態はほとんどない。雄が分泌した特殊な糸の下に置いた精包を,糸に触れた雌がとり上げる風変りな間接授精を行う。水を飲まずに空中の水分を体にとり入れることが知られている。消化酵素としてセルロースを分解するセルラーゼを分泌することも特異である。暗所を好み,歩行はすばやい。昔から有名な家住性種であるヤマトシミCtenolepisma villosaは主としてのりや薄い紙を食するが,一般に〈シミの食痕〉と呼ばれる穴はシバンムシ科の甲虫によるものである。外来のセイヨウシミLepisma saccharinaが近年住宅内に増えている。マダラシミThermobia domesticaは暖地に広く分布し,家屋内で小麦粉などの乾燥食品を食害することが知られるが,日本からの記録は少ない。海岸の洞穴(セトシミ)や暖地のアリの巣中(アリノスシミ類)にすむ種も知られる。北アメリカの針葉樹倒木材中に発見された種は原始的形態をとどめており,生きている化石とされている。なお,シミ目Thysanuraはシミのほかにイシノミ亜目を含む。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シミ」の意味・わかりやすい解説

シミ
しみ / 衣魚
紙魚
silverfish

昆虫綱シミ目シミ科Lepismatidaeの昆虫の総称、また一般的にヤマトシミなど室内にすむ種をさすことも多い。無翅(むし)昆虫類の一つで、成虫も原始的な幼虫形の体形のため、いわゆる有翅昆虫類の一般体形とはかなり異なる虫である。体長は8~11ミリメートル。体形は平たく細長、胸部はやや幅広く、その外方は丸みを帯びている。頭部には1対の鞭(むち)状の触角があり、複眼はあるが単眼は退化している。口は外口的で直翅目の口と似ているが、大あごは2節で甲殻類のそれに似ている。3対の脚(あし)はいずれも歩行肢(ほこうし)。尾端には中央の1本と左右1対の計3本のほとんど等長の尾毛があり、これがこの類の大きな特徴となっている。臀板(でんばん)が突き出していることもある。いずれも体全体銀灰色の鱗片(りんぺん)で覆われているので、いぶし銀のような輝きをもっている。行動は比較的敏捷(びんしょう)であるが、その生態は種によって異なっている。

 ヤマトシミCtenolepisma villosaは、古来「衣魚」とか「紙魚」と書かれた虫のことで、古文書、古い和紙、書籍類をかじり、衣類をも食害する室内害虫である。また、この種は貯蔵穀倉に発生することもある。日本全土、中国、インドなどに分布する。マダラシミThermobia domesticaは全世界の熱帯に分布する。全体が白く、灰褐色の鱗(うろこ)が混ざり、単色でないのでこの名があるが、ヨーロッパやアメリカでは台所や調理場の害虫として嫌われる。セイヨウシミLepisma saccharinaは、近年東京や札幌などの大都市で発見されているが、野外の樹皮下で得られることもある。このほか生態の変わっているものにセトシミHeterolepisma disparやクボタアリシミAtelura kubotaiがある。前者は和歌山県瀬戸の海岸のスレート粘板岩間にすみ、後者は八丈島から最初得られ、アリの巣中にアリと共生する種である。

[山崎柄根]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「シミ」の解説

シミ

シミには、女性の頬部などに左右対称にできる淡褐色の色素斑である肝斑(かんはん)や、男女を問わず加齢と共に発生頻度が増える不定形の老人性色素斑などがある。前者は女性ホルモン変調、後者は紫外線が主な原因と考えられている。ソバカスは、主に目の周りから鼻筋の高い部分、頬にかけてできる粟粒大から米粒大ほどの褐色の雀卵斑(じゃくらんはん)と呼ばれる色素斑。遺伝的要素が原因。シミやソバカスは紫外線によって悪化する。防止する最大のポイントは、メラノサイト(色素細胞)の中にある酵素チロシナーゼの活性を阻害すること。また紫外線による過剰なメラニンの生成には、炎症や色素沈着に関連する情報伝達物質の過剰産生が関与。シミ、ソバカスを防止する薬剤として、トラネキサム酸、アルブチン、ビタミンC誘導体などがある。

(三浦志郎 資生堂ビューティーソリューション開発センター所長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「シミ」の意味・わかりやすい解説

シミ

シミ目の昆虫の総称。ヤマトシミは体長10mm内外,銀白色の鱗粉におおわれる。無変態,無翅。屋内の暗所を好み,書物などの紙,人絹などセルロース質を食べる。日本全土,中国,ジャワ,インドに分布。ヨーロッパ,北アメリカではセイヨウシミ,朝鮮ではチョウセンシミが紙に加害する。シミ科は全世界に約400種を産し,比較的乾燥した暗所にすみ,中にはアリやシロアリと共生する種類もある。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android