シバ(ヒンドゥー教の神)(読み)しば(英語表記)Śiva

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シバ(ヒンドゥー教の神)
しば
Śiva

ヒンドゥー教の神。元来「吉祥(きちじょう)」を意味する形容詞であり、漢訳仏典では湿婆の字をあて、大自在天、摩醯首羅(まけいしゅら)などといわれるようになった。その前身をインド最古の宗教文献『ベーダ』の暴風神ルドラに求めうるが、学者によってはさらにこの神の起源をインダス文明に求めようとする者もある。『ベーダ』ではかならずしも重要な神格ではなかったが、ヒンドゥー教において一躍有名になり、ビシュヌとともに信者を二分し、内部にも多数の分派を生じた。

 ヒンドゥー教神話にあって、彼は苦行者の神的塑型となってヒマラヤ山にこもって激しい苦行に専心するが、ヒマラヤ山の娘パールバティーと結婚して愛欲の限りを尽くす。三神一体の神話では、ブラフマー(梵天(ぼんてん))が宇宙創造、ビシュヌがその維持をつかさどるのに対してシバは破壊をつかさどり、ベーダ祭式の破壊者としても知られている。

 他面、彼の男根はリンガの名のもとに崇拝され、生殖器崇拝と深くかかわっている。苦行と愛欲、破壊と生殖など矛盾した属性を有するきわめて個性的な神で、歌舞音曲の守護神でもある。シバは、額に三眼を有し、三日月を頭に頂き、虎皮(とらかわ)をまとい、三叉(みつまた)の戟(ほこ)を持ち、深山妖怪(ようかい)を従え、身に屍(しかばね)の灰を塗って火葬場に出没するなど、狂躁(きょうそう)かつ陰惨な相を有している。その過激な陰惨さは神妃(しんぴ)パールバティー(別名ドゥルガー、カーリー)の信仰に顕著である。

[原 實]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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