シドニー(Sir Philip Sidney)(読み)しどにー(英語表記)Sir Philip Sidney

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シドニー(Sir Philip Sidney)
しどにー
Sir Philip Sidney
(1554―1586)

イギリスの詩人。ルネサンスの理想的宮廷人の典型。エリザベス女王の寵臣(ちょうしん)レスター伯Robert Dudley, 1st Earl of Leicester(1532/1533―1588)の甥(おい)として生まれる。オックスフォード大学に学び、ヨーロッパに遊学、ルネサンス文化に触れる。帰国後、新教徒の理想に忠実な政治家として活躍、宮廷の寵児となる。新教徒への援軍を率いてオランダに出征し戦死。このとき、瀕死(ひんし)の重傷を負いながら、水筒の水を傷ついた兵卒に譲るという逸話を残している。文学者としては、牧歌風の物語『アーケイディア』(1590)、初代エセックス伯の娘ペネロペ・デベルーPenelope Devereux(1562/1563―1607)への恋情を素材としたソネット集『アストロフェルとステラ』(1591)、道徳的見地から文学を批判するゴッソンStephen Gosson(1554―1624)の書物が機縁となって執筆され、英文学史上最初の重要な詩論と認められる『詩の弁護』(1595)などの著作を残す。

[藤井治彦]

『大塚定徳他訳『アストロフェルとステラ』(1979・篠崎書林)』

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