シスター・キャリー(読み)しすたーきゃりー(英語表記)Sister Carrie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シスター・キャリー」の意味・わかりやすい解説

シスター・キャリー
しすたーきゃりー
Sister Carrie

アメリカの作家T・ドライサーの長編処女作。1900年刊。都会にあこがれてシカゴにきたキャリー・ミーバーは、セールスマンドルーエ同棲(どうせい)するうち、一流バーの支配人ハーストウッドを知りニューヨークへかけおちする。そこでキャリーは機会をつかみ、女優として成功するが、ハーストウッドはバーの経営に失敗、キャリーにも捨てられてガス自殺を遂げる。成功者と落後者の対比を軸にアメリカ社会の冷酷な実相をリアルに描き、物質文明の刺激のなかに生きる人間像を浮き彫りにする初期アメリカ自然主義小説の傑作。当時、「不道徳な作品」とみなされて出版が難航し、1000部だけ発行されたが500部も売れなかった。

[大浦暁生]

『小津次郎訳『シスター・キャリー』全3巻(1951・三都書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シスター・キャリー」の意味・わかりやすい解説

シスター・キャリー
Sister Carrie

アメリカの小説家セオドア・ドライサーの処女作。 1900年刊。田舎娘キャリー・ミーバーは,1890年代のシカゴに出て生活に困り,旅回りのセールスマン,チャールズ・ドルーエに救われ愛人となるが,やがて妻子ある酒場の支配人ジョージ・ハーストウッドとニューヨークに駆落ちし,彼女は花形女優として成功する一方,男は転落の末に自殺するという物語。自然主義的手法を用いたこの作品は,内容が不道徳であるとして,1900年にはわずか数部が出版されたにすぎず,12年まで一般読者の手に入らなかった。

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