シェパード(Sam Shepard)(読み)しぇぱーど(英語表記)Sam Shepard

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シェパード(Sam Shepard)
しぇぱーど
Sam Shepard
(1943―2017)

アメリカの劇作家俳優職業軍人であった父親の転勤のため、各地を転々とする幼少時代を送ったあと、カリフォルニアに落ち着く。19歳のときに家を離れ、ニューヨークに出てジャズクラブでウェイター助手をつとめるかたわら劇作を始め、1964年に『カウボーイたち』で劇作家としてデビューする。その後次々と作品を発表して、伝統的なリアリズムとは一線を画する、プロットよりもイメージや台詞(せりふ)のリズムを重視する斬新(ざんしん)な作劇法で数年にしてオフ・オフ・ブロードウェーの旗手的存在となる。ロックの生演奏を織り込んだ『罪の歯』(1972)は、この時期の集大成的作品といわれる。1970年代の前半数年間をロンドンで過ごし、帰国後作風を変え、写実幻想を微妙に織り合わせた手法で、父子や男女の関係に絡めてアメリカ社会とアメリカ人の精神的不毛さを鋭く追求する作品が目だつようになる。ピュリッツァー賞受賞作の『埋められた子供』(1978)、『トゥルー・ウェスト』(1980)などが代表作。1980年代以降は映画界での活動も目だち、俳優としての出演作に『ライトスタッフ』(1983)、『フール・フォア・ラブ』(1985)、脚本に『パリテキサス』(1984)、監督作品に『ファー・ノース』(1988)などがある。

[一ノ瀬和夫]

『安井武訳『埋められた子供』(1989・新水社)』『小林庸浩訳『パリ、テキサス』(1990・南雲堂)』『甲斐萬里江訳『フール・フォア・ラブ』(1990・カモミール社)』『古山みゆき訳『サム・シェパード一幕劇集』(1991・新水社)』『黒木三世訳『鷹の月』(1993・中央公論社)』『畑中佳樹訳『モーテル・クロニクルズ』(ちくま文庫)』『諏訪優訳『ローリング・サンダー航海日誌』(河出文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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