日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェパード(イヌ)」の意味・わかりやすい解説
シェパード(イヌ)
しぇぱーど
shepherd
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。家畜イヌの1品種で、ドイツ原産の万能作業犬。セパードともよばれるが、正式名はドイツシェパード犬German shepherd dogという。元来は牧羊犬として飼育されていたものであるが、軍用犬、警察犬、警備犬、番犬としても優れた能力を発揮し、盲導犬としても活躍している。体形は重心が低く、背から臀(でん)部にかけてなだらかな曲線を描いている。性質は大胆で賢く、作業欲は盛んで、よく人間の命令に従う。歩様はリズミカルで歩幅が大きく、流れるような速歩は特徴的で、スピードと持久力をもつ。大きさは体高55~63センチメートル、体重26~38キログラム程度である。毛色はブラックエンドタン、ウルフ、ブラック、赤褐色で、背が黒色のものなどがある。
非常に厳正で計画的な選択繁殖がされてきた犬種の典型的なもので、登録原簿の作成は1899年までさかのぼる。大別すれば四大系統があげられ、それぞれの遺伝的な長所も欠陥もよく調査され、繁殖者に対して指導がなされている。血統書には近親繁殖を注意する欄があり、体形の完成を目ざすばかりでなく、性能や体質面でも劣化防止に尽力されている。このため、優れた体形の維持を目ざすショーのほかに、訓練競技会も盛んに開催されている。なお、本犬種はドイツ以外の欧米ではアルサシアンAlsatian(アルザス地方のイヌ)とよばれることがよくある。
[増井光子]